おやつにドーナツ、逆転無罪 窒息の危険性「相当低い」―特養死亡事故・東京高裁


長野県の特別養護老人ホーム「あずみの里」で入所女性=当時(85)=のおやつにドーナツを与えて窒息させ、その後死亡させたとして業務上過失致死罪に問われた女性准看護師(60)の控訴審判決で、東京高裁は28日、求刑通り罰金20万円とした一審判決を破棄、無罪を言い渡した。大熊一之裁判長は「ドーナツで窒息する危険性も予見可能性も相当低い」と述べた。介護中の事故で個人に刑事罰を科せば「現場が萎縮する」などと懸念する声が上がり、判決が注目されていた。大熊裁判長は「ドーナツは女性が入所後にも食べていた通常の食品」と指摘。事故6日前に女性のおやつがゼリーに変更されていたことについて、「感染症対策で嘔吐(おうと)防止を図ることを目的としていた」と認定し、「窒息の危険を回避すべき差し迫った兆候や事情があって変更されたわけではない」と述べた。判決は、同施設でのおやつの介助について、介護職の業務で、手伝った看護職に「(変更が)周知された形跡はない」とも指摘。准看護師が変更を確認しないまま、女性にドーナツを提供したことが「刑法上の注意義務に反するとは言えない」と結論付けた。昨年3月の一審長野地裁松本支部判決は「女性には認知症などの影響で食事を丸のみしてしまう傾向があった」と述べ、准看護師はゼリーへの変更の確認を怠ったなどと判断していた。入所女性は2013年12月12日、准看護師がおやつに提供したドーナツを食べた直後に意識を喪失。心肺停止状態で救急搬送され、14年1月に死亡した。准看護師は同5月に書類送検され、同12月に在宅起訴された。東京高検の久木元伸次席検事の話 判決内容を検討し、適切に対処したい。

関連記事

ページ上部へ戻る