厚生労働省は22日、社会保障審議会介護給付費分科会で、4月以降に改定される介護報酬の配分方針を示した。介護職の賃上げとして2・5%のベースアップ(基本給引き上げ)につなげる処遇改善が重点。認知症や高齢でも住み慣れた地域で必要なケアを受けながら暮らせる「地域包括ケアシステム」を引き続き掲げ、赤字に陥っている特別養護老人ホームなど施設系サービスの基本報酬を増額する一方、黒字が続く訪問系は減額した。年末の予算編成で介護報酬は4月に1・59%引き上げることが決まっている。6月から始まる処遇改善は各事業所がサービスごとに受け取る報酬全体に加算する形とし、賃金や職場環境の改善など一定の条件を満たせば増す仕組み。訪問介護では現行の加算率は最大で22・4%だが、今後は最大で24・5%になる。介護士に加え、リハビリ職やケアマネジャーらにも対象を広げる。26年度にはさらに2%のベアを目指す。施設系サービスのうち、要介護5の人が特養を個室利用する場合、1日当たりの報酬を8470円から240円増やす。一方、訪問介護では20分未満の身体介護は1回の報酬が1670円から40円下がる。今後増える認知症患者への対応として、通所や訪問、宿泊など多様なサービスを提供する小規模多機能型居宅介護を充実させる。認知症患者へのケアを専門とする人材を配置するなど体制を整えた場合、利用者1人につき最大で月1200円増の9200円を加算する。特養や老健施設を含む施設系事業者には、認知機能の低下に伴う妄想や暴力への早期対応などに月1500円加算する仕組みも設ける。ケアプランの作成やサービス調整を担う居宅介護支援事業所の加算では、算定要件に通学や仕事をしながら家族を介護する子ども「ヤングケアラー」などの研修参加を加え、月140円増の5190円とした。報酬の増額は事業者の収入が増える半面、利用者負担は増えることになる。診療報酬に合わせ6月に改定される一部の訪問系サービスを除き、原則4月に施行される。金額は1単位10円で計算した。【宇多川はるか】