小児在宅、薬剤師の関与拡充を


小児の在宅医療に薬剤師が深く関わることが社会から求められている。小児を対象にした訪問薬剤管理指導の件数は伸びているが、2021年6月のデータで月間約4800件とまだ少ない。小児の中でも、NICU等に長期入院後、在宅医療に移行し、人工呼吸器や胃ろう等を使用して、痰の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要とされる「医療的ケア児」は約2万人いると見られる。薬剤師が深く支援すべき家族や小児は多い。こうした背景から、昨春の診療報酬改定で、医療的ケア児に薬学的管理や指導を行った場合の評価として「小児特定加算」が新設された。外来と訪問薬剤管理指導のどちらの場合も加算対象になる。算定件数はまだ少なく、今後の伸びが期待されている。医療的ケア児の薬物療法は複雑で、高度な薬学的知識が求められる。多種類の薬が使用されることが多い上、適応外使用や小児用量、相互作用、配合変化などにも注意が必要だ。経管で薬を投与するため、薬剤を粉砕したり、カプセルを外したりするなど調剤に手間や時間もかかる。その他にも細やかな対応が求められる。今月、和歌山市で開かれた日本薬剤師会学術大会の分科会でも、ポイントや課題が挙がった。在宅医療に特化した薬局を運営する薬剤師の小林篤史氏(カリン薬局)は、人工呼吸器関連の日常生活用具の購入に補助金が出たり、在宅療養指導管理料による材料の支給を受けられたりする場合があると説明。医療材料や衛生材料の供給に薬局が関わる機会は多く、薬剤師もこうした制度を把握しておくと、家族の経済的な負担の軽減を支援できると呼びかけた。制度の未整備を問題視する声もあった。小児専門病院で働いた経験のある薬剤師の飯田祥男氏は、在宅の人工呼吸器に用いられる注射用水が適応外使用になるため、原則としては院外処方箋を発行できず、薬局から訪問薬剤管理指導で注射用水を患者宅に届けられないと指摘。添付文書の変更や公知申請による制度の整備を求めた。今後、小児の在宅医療に関わる薬局をどれだけ増やせるかが課題だ。日薬が実施した調査で、医療的ケア児の調剤には1件当たり平均約2時間前後を要することが分かっている。これまでは、経営面で赤字になることや薬剤師のマンパワー確保の難しさなどの理由で、積極的に関わろうとする薬局は少なかった。小児特定加算の新設で経営面の課題は緩和され、薬剤師は関わりやすくなった。現在の点数では不十分との声もあるが、関与の実績を示すことで点数は伸ばせるだろう。薬局薬剤師が小児の在宅医療に関わることで、地域の多職種とのつながりが生まれる。活動を続けるうちに関係が深まり、その結果、地域の医療や介護、健康を支えるインフラとして欠かせない存在になるのではないか。

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