老化が生活習慣病を引き起こす仕組みの一つがマウスの実験でわかったと、大阪大の吉森保教授(細胞生物学)らの研究チームが国際科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。細胞内の不要物を分解する「オートファジー(自食作用)」が過剰になり、生活習慣病の予防に必要なたんぱく質を分解するとみられ、治療薬の開発につながるとしている。オートファジーは大隅良典・東京工業大栄誉教授が仕組みを解明し、2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。吉森教授らは09年、オートファジーを抑制するたんぱく質「ルビコン」を発見。今回、高齢マウスの脂肪細胞でルビコンの量が減り、オートファジーが活発になっていることがわかった。遺伝子操作でルビコンを作れなくしたマウスは血糖値が上がりやすく、高脂血症に似た症状が出た。脂肪細胞を調べると、オートファジーが過剰になり、血糖値やコレステロール値を正常に保つホルモンの分泌に必要なたんぱく質までも分解していた。吉森教授らはこれまでの研究で、老化に伴い肝臓や腎臓などでルビコンが増えてオートファジーが低下し、病気を発症したり、運動機能が低下したりすることを明らかにしている。