地域連携体制の強化が進む中、循環器疾患領域で薬局薬剤師のさらなる関与が求められている。心不全の悪化抑制や、循環器疾患を早期に発見し受診につなぐ役割だ。心不全の悪化抑制については、今年度の調剤報酬改定で薬局薬剤師のフォローアップ業務に該当する「調剤後薬剤管理指導料」の算定対象が慢性心不全患者に拡大された。心不全は、急性増悪による再入院率が高い。入院を繰り返すことで病態の悪化が加速し、QOLも損なわれる。数週間の入院期間中に病院で集中的な管理を行い症状が落ち着いても、治癒するわけではない。退院後の病態の悪化をいかに防ぐかがカギになる。病態悪化を防ぐには、心不全の薬物療法の意義を正しく理解した上で服薬を続けてもらうことや、塩分や水分を制限した食事、過労を避けた生活などが重要になる。患者の理解度や生活習慣に応じた柔軟で個別性の高い支援が必要で、調剤報酬の新設には、ここに薬局薬剤師が関わってほしいとの期待がある。地域における心不全の薬剤師間連携体制を構築する上で、日本心不全学会と日本薬剤師会が作成した「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き」が役立つ。地域の病院と薬局の薬剤師が心不全患者の治療で連携するために必要な知識や手順のほか、心不全薬剤管理サマリーや服薬情報提供書などの連携ツールを示したものだ。心不全を対象に病院と薬局の薬剤師が連携して取り組む地域はまだ少ない。調剤報酬新設や同手引きによる後押しで、実践地域が増えることが期待されている。一方、薬局には、地域の健康相談窓口として疾患を早期に発見し治療につなぐ役割もある。各種疾患が対象になり、循環器疾患もその一つだ。取り組みの一環として毎年、8月10日の「健康ハートの日」を踏まえて日本循環器協会など関連4団体が主催する大規模なイベントに薬局が参加し、薬局薬剤師が血圧測定の意義を地域住民に伝える啓発活動を行っている。関連資格として、日本循環器学会の「心不全療養指導士」の資格を持つ薬剤師は多い。病院薬剤師が中心だが、薬局薬剤師の資格取得者も存在する。日本高血圧学会や日本循環器病予防学会など4学会が立ち上げた「循環器病予防療養指導士」の資格を持つ薬剤師もいる。薬局薬剤師にも、循環器疾患領域で関わりを深めようとする意識は広まりつつある。様々な動きの背景には国の施策がある。2018年に循環器病対策基本法が成立し、20年に循環器病対策推進基本計画が閣議決定された。高齢化に伴って心不全等の患者が増え、医療費増大の一因になっている。医療費抑制の視点からも循環器疾患の発症や悪化の抑制は重要だ。国全体の動きも踏まえ、薬剤師は社会でどんな役割を担えるのかを考えて、取り組みを深めてもらいたい。