国立がん研究センターは26日、希少がんの患者に開発中の薬を投与する治験（臨床試験）で、センターの中央病院（東京都中央区）から遠方の患者をオンライン参加できるようにすると発表した。中央病院には一度も通院せずに済むため、地方の患者が参加しやすくなるほか、希少がんの治療薬の開発が進むことも期待される。センターによると、中央病院は3月末時点で525件のがんの治験を実施している。これに対し、地方では大学病院でさえ治験数が1桁の場合があるという。特に患者の少ない希少がんでは、治験の件数が少ないうえ都市部に治験が集中しやすく、地方から参加するのに移動時間や経済面での負担が大きい。希少がんの患者団体からは、地方に住む患者でも参加できるよう改善の要望が出ていた。今回の治験自体は国内4施設で実施され、このうち中央病院のみオンライン治験をする。治験の対象は、類上皮肉腫という手や腕などにできるがんの患者。比較的若い人に多く、国内の主な病院での患者数は2015年までの10年間で174人という。治験では、一部の血液がんで承認されている薬「タゼメトスタット」の有効性と安全性を、類上皮肉腫の患者で調べる。8月から患者登録を始める予定だ。オンライン治験で、地方の患者は地元の病院を受診する。中央病院とはタブレット端末で結ばれており、主治医の同席のもと定期的に治験の診療を受ける。治験薬は中央病院から患者宅に直接送られる。血液検査や薬の効果を判定する画像検査は、地元の病院で受ける。これらの情報はクラウド上で共有される。副作用が出た時には中央病院が対応するが、緊急時は地元の病院も協力する。同じような取り組みは、愛知県がんセンターが昨年から別のがん治療薬の治験で実施している。中央病院の島田和明病院長は「オンライン治験は患者を早く集められるため、治験期間の短縮やコスト削減にもつながる」と語る。希少がんで実績を重ねて、ノウハウを他の機関とも共有し、遠方の患者でも治験に参加しやすい環境を作ることを目指しているという。日本希少がん患者会ネットワークの真島喜幸理事長は「希少がんは治療薬が少ない。オンライン治験が広がり、身近な医療機関から参加できるようになれば、患者の希望になる」と話した。【下桐実雅子】