山形大医学部付属病院(山形市、佐藤慎哉病院長)は特殊な医療器具を使って心臓の左心房にある左心耳(さしんじ)を閉鎖し、血栓ができるのを防ぐ手術に成功した。心房細動が原因となって起こる脳梗塞の危険性を減らすことができる。多くのケースで血栓が形成されるのを防ぐための抗凝固薬の服用を中止できるため、出血リスクの軽減も期待できる。県内では初の実績という。手術は内科学第一講座の橋本直明病院助教(35)、有本貴範病院講師(46)、田村晴俊助教(43)が中心となり、2月18日に男性患者2人に行った。橋本氏によると、不整脈の一つである心房細動が生じると、心臓の中で血液がよどみ、血の塊である血栓ができやすくなり、脳梗塞を引き起こす恐れがある。心臓の左心耳は突出した形で血栓ができやすい。心臓に由来する血栓の約9割が左心耳で血液が滞ることで起こるという。同病院によると、血栓を防ぐ方法としては血液を固まりにくくする抗凝固薬を使うのが一般的だが、長期間にわたり服用すると、脳や消化管などで出血を起こすリスクが高まる恐れがある。こうした課題を受け、この手術で先行していた筑波大付属病院で経験を積んだ橋本氏を中心に導入を検討してきた。手術は右脚の付け根からカテーテルで特殊な小型医療器具を挿入し、左心耳に到達後、クラゲ状に開くことで左心耳を閉鎖する。医療器具は医療機器メーカーのボストン・サイエンティフィック社(米国)が開発した「WATCHMAN(ウォッチマン)」で、大きさは最大径21~33ミリ。左心耳をふさぐことで血栓が形成されるのを防ぐ。手術は1~2時間程度で全身麻酔で行い、体への負担は少ないという。2019年9月に始まった手術で、東北地方では仙台厚生病院(仙台市)などに続き4施設目の実績。橋本氏は「抗凝固薬を服用していた患者が脳出血や消化管出血を起こし、救急搬送されるケースがある。今後もこの治療を行い、患者の健康寿命の延伸につなげたい」としている。>>山形新聞トップ >>県内ニュース >> 社会