新潟大と新潟県燕三条地域の産業団体などで進めている医工連携事業の第1号製品となる「簡易トイレ」が完成し、お披露目された。主に病室のベッド近くに置く検体回収用で、地場の高度なものづくり技術が医療現場のニーズに応えた。4月1日に発売し、介護施設などでの普及も目指す。 新潟大は2019年2月に三条工業会や三条、燕両商工会議所と契約を締結。その後、行政や金融機関なども加わった「燕三条医工連携コンソーシアム」を立ち上げ、55社が現在参加している。 簡易トイレは燕市の金属加工業「アベキン」が設計と製造を担当し、新潟大大学院医歯学総合研究科で消化器内科を担当する教授らが監修した。 大きな特徴は、立ち上がる際につかむ取っ手を折りたためるようにしたことで、ベッドから横移動がしやすくなった。キャスター付で、重ねられるため収納もしやすい。軽量化と強度の両立にも重きを置いた。 新潟市中央区の新潟大駅南キャンパスときめいとで9日に開いた発表会見に出席したアベキンの社長は、「医療分野の製品開発は初めてだったが、家具などを作る自社のノウハウと技術を生かすことができた」と力を込めた。 監修の教授は「地元にしっかりと技術を持つ企業があれば県外に出る必要がないし、いろいろとお願いしやすい。高齢化の問題は海外にもあるので、新潟空港を通じて販路は広げられる」と期待した。 簡易トイレは、取っ手の可動式が6万円、固定式が5万円(いずれも税別)。年間1200台の販売を目指す。 燕三条医工連携コンソーシアムは、第2号製品としてリウマチや巻き爪の人を対象とした爪切りの開発を進めており、今後もさまざまな製品を検討している。