脳の働き分析し難聴治療 全国初の機関4月開設 神戸中央市民病院


神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)は4月、耳に特化した最先端医療や研究を行う「総合聴覚センター」を新設する。難聴者の脳の働きを分析し、患者それぞれに合った治療を探る全国初の機関になるという。人工内耳の子どもや聞こえに悩む高齢者ら年間延べ2千人以上の治療を見込む。同病院の内藤泰耳鼻咽喉科部長によると、先天性の難聴者は人口約千人に1人の割合でいる。同病院では全国から千人近くの先天性難聴者が治療を受けており、うち約800人が人工内耳を使う患者という。先天的な聴覚障害の治療は、3歳ごろまでに人工内耳手術を受けることが多いが、手術を受けた約2割に音声トレーニングだけでは言語能力が十分発達しないケースがある。そこで、脳内のどこが活性化しているかを血流の変化で調べたところ、本来は音声情報を処理する「側頭葉」が、音ではなく視覚情報で活性化している人がいることが分かったという。センターでは、こうした患者らに対し、効果が高いことが分かってきた、手話や指文字も併用するトレーニングなどを試みる。また、訓練で簡単な言葉は使えるようになっても、修飾語が付くなど文章が複雑化すると理解できない患者も多くいるため、脳機能の側面から言語習得のメカニズムを研究する。高齢者では、難聴が引き金となって認知症を発症するケースが多いことに着目し、その原因の解明にも挑戦するという。センターは同病院の南館に開設し、約200平方メートルのフロアに診察室や検査室のほか、データ解析室なども設ける予定。内藤部長がセンター長に就き、医師9人、言語聴覚士5人が病院と兼務で勤務する。内藤部長は「最先端の設備やハイレベルのスタッフで、継続的な脳機能からの先端治療を進める。全国の難聴者がリモートも含めて交流できる場にもなるようにしたい」と話している。(霍見真一郎)

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