体の自由が利かず言葉を発することも困難な難病患者の意思表示に欠かせない「意思伝達装置」。装置を使う際に重要となるのが、指先や視線の動きで操作する「スイッチ(入力装置)」だ。装置の販売、メンテナンスを手がける福祉支援サービス「コミル」(大阪府東大阪市)代表の馬渕広行さん(55)もスイッチを作る一人。「“スイッチ屋”として患者さんと社会をつないでいきたい」と、患者ごとの微細な動きをキャッチするための工夫や技術改良に取り組んでいる。(井上裕貴)《はい》《うれしい》画面上のひらがな五十音表で入力したい文字が光ったときに、患者が中指に着けたスイッチを親指で挟むとその文字が入力され、文章を作成できる。手足が動かせない患者でも、顔の横に固定されたスイッチに頬を当てることで解決する。「『家族と話したい』『パソコンで仕事をしたい』といった患者さんの願いを実現するお手伝いができればの一心ですね」。こう笑みを見せた。装置に欠かせないスイッチ作りに30年以上携わってきた。大学の教育学部で障害児教育を学び、卒業後に入社した福祉機器の専門商社で意思伝達装置の販売やメンテナンスを手がける中で、独学でスイッチ作りの技術を習得。平成14年に現在の形に独立した。■一人一人に合わせ心がけているのは、一人一人に合ったスイッチを作るため、必ず患者の元を訪れること。月に約10人の患者と会い、体の動かせる部分や範囲を確認して操作しやすい位置を探る。既製品のスイッチではうまく押せない場合もあるため、段ボールとテープで固定したり、自分でスイッチを作ったりと試行錯誤を重ねる。一般的に「手を動かせない」というと「物がつかめない」「指さしができない」とのイメージがある。だが、指先を5ミリでも動かせればスイッチ操作は可能だ。指が全く動かない場合でも、足や頬、こめかみなどの動きでも入力でき、「どこが動かせるかが分かれば、いかようにも意思伝達装置は使える」と自信をみせる。続きを読む