ロボット手術、行田総合病院で300症例を達成 先端医療から標準医療に 保険適用広がり、直腸がん手術も


埼玉県の行田総合病院で、手術支援用ロボット「ダ・ヴィンチ」による手術(以下、ロボット手術)が300症例を達成した。2017年5月の導入時は、前立腺がん症例のみだったが、その後の保険適用の広がりで、最近では直腸がん手術での症例も増えている。泌尿器科部長で副院長の林暁医師は「保険適用でロボット支援手術は先端医療から標準医療になりつつある。泌尿器科で先行してきた実績を活かし、今後も質が高い安全な手術を提供していきたい」と話している。ロボット手術は、腹部に数か所空けた数ミリの穴からアームとカメラを挿入し、医師が患部の立体画像を見ながら遠隔操作を行う手術法。従来の開腹手術に比べて傷が小さいため体にかかる負担が少ない。また腹腔鏡手術では困難な鉗子先端が自由に曲げられる点や、手ぶれ防止機能があることにより、手術がより容易に安全にできるようになったという。その結果、手術時の出血も少なく済み、術後の回復が早くなっている。林医師は「高齢者の罹患率が高い前立腺がんの手術で安全性も実証されており、ロボット手術は高齢者にも選択肢となり得る治療法」と話す。ロボット手術は、泌尿器科以外の領域で保険適用の範囲が広がり、18年10月からは腎がん部分切除術、膀胱がん全摘術、消化器外科では直腸がん手術もできるようになった。同病院では、現在も月10件のペースでロボット手術を実施している。泌尿器科常勤医師6人はロボット手術の認定資格を、そのうち2人は指導者認定資格をもっている。澤田陽平医師はロボット手術導入1年前の16年から携わってきた。「県北エリアでロボット手術ができるのは当院だけ。がんに有効な放射線治療の設備については、近隣の病院と連携し、患者さんに合った最適ながん治療を提供できるようになった」と説明する。同病院では、今後もロボット手術が他領域にも増えると予測。林医師は「今は人間の手で感じられる触感がないが、それも医師のトレーニングでバーチャルな感覚が生まれると言われる。高度なロボットが登場しても術者は我々。便利なツールを最大限生かせるよう修練は欠かせない」と技量を磨くことの重要性を訴える。【メモ】行田総合病院は1988年開設。504床。内科・外科・整形外科・リハビリテーション科など。地域医療支援病院、災害拠点病院、埼玉県救急搬送困難事案受入病院などに指定されている。17年に手術支援ロボットを導入し、泌尿器科による前立腺がん摘出手術開始。それ以降、18年には腎がんの部分、膀胱がん摘出と対応症例も増え、19年には消化器外科による直腸がん摘出手術もスタートさせている。

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