広島市は、認知症のため1人で外出して行方が分からなくなる高齢者の身元をQRコードで確認する「見守りシール」システムで、広島、山口両県の7市町と連携する。地元以外の自治体に出掛けるケースなどを想定し、早期発見と家族へのスムーズな引き渡しにつなげるのが狙い。高齢者の名前や住所などを事前に登録し、情報を取り込んだQRコードを縦約2センチ、横約5センチのシールに印刷。衣服にアイロンで圧着したり、つえなどに貼ったりして使ってもらう。1人歩きを見つけた人や保護した警察官がスマートフォンでQRコードを読み取ると、電子メールが自動的に家族に届く仕組み。読み取った人には高齢者の個人情報が分からず、スマホ上の伝言板を通じて家族と現在地をやりとりするなどし、引き渡しにつなげる。市は、効果をより発揮できるよう、広島広域都市圏協議会(会長・松井一実市長)の加盟自治体に連携を提案。先行してシステムを導入した江田島市をはじめ、廿日市、柳井の計3市と、府中、安芸太田、上関、田布施の4町が応じた。府中町は本年度中にQRコードによる身元確認システムを始める。その他の市町も住民への周知などを進める方針で、8市町の事業費は計144万円。広島市と接する府中町の担当者は「広島市や海田町など隣の市町で見つかるケースが多く、連携は早期発見につながる」とする。高齢化率が50・4%(今年1月時点)と広島県内で最も高い安芸太田町の担当者も「町内なら近所同士で状況を把握しているので家族にすぐ連絡できるが、公共交通機関で遠くに移動した場合は目が届かない」と指摘する。ただ、広島市のシステムに登録しているのは8月19日時点で95人と、事業を始めた2018年度に市が見込んだ200人を大きく下回る。システムを活用して身元確認につながったのは1件だけと、認知度不足も課題となっている。広島県警によると、19年に認知症とみられる高齢者を県警が保護した事例は県内で延べ1641人。市地域包括ケア推進課は「事故のリスクや家族の負担を軽くするため、広域でより多くの利用を促したい」としている。(加納亜弥)<クリック>広島市の「見守りシール」 認知症などのため1人で外出して行方不明になる可能性がある人を対象に交付する。民生委員や警察署、地域包括支援センターなどと共有する連絡網「SOSネットワーク」に、対象者の名前や生年月日、既往歴、写真などの情報を事前登録すると、QRコードを印字したラベルシールを50枚まで無料で受け取れる。区役所などで登録する。【関連記事】