調剤業務の外部委託/武藤正樹氏


“一包化”外注で薬剤師を在宅に 4月20日、内閣府規制改革推進会議の医療介護ワーキンググループが、保険薬局の調剤業務の外部委託をテーマに開催された。当日は河野太郎規制改革担当大臣も出席した。著者もこのワーキンググループの専門委員の1人なので、今回はこの問題を取り上げよう。保険薬局の薬剤師が在宅で行えることは多い。医薬品の服用方法や保管方法の指導、残薬管理、お薬カレンダーの作成などがある。こうした薬剤師の働きで在宅患者の服薬状況が改善したり、薬物有害事象が発見されたりするなど効果が上がっている。しかしここでネックになるのが保険薬局の薬剤師が調剤業務に時間を取られることだ。特に在宅患者に増えている薬剤の一包化の調剤業務に手間がかかる。一包化とはたとえば朝に飲む薬は4種類、昼は2種類、夕は3種類の薬があると、それぞれの薬を1つの小包装に詰め替える作業のことだ。これで服用間違いや飲み忘れを防止できる。ある調査によると一包化調剤は全体の処方せんの7%まで増えていて、しかも一包化にかかる調剤時間は通常調剤より11分ほど余計にかかるという。薬剤の一包化を行う大型機械を薬局に導入すれば調剤時間を6割ほど削減できる。しかし問題はこうした大型機械を整備できないいわゆる小規模のパパママ薬局の存在だ。小規模薬局は全国6万軒の保険薬局の4分の3を占める。小規模薬局では在宅に出向きたいと思っても店番や、一包化業務に手間を取られてなかなか在宅に向かえない。こうした小規模薬局の薬剤師を一包化業務から解放し、在宅訪問を可能にするのが、調剤業務の外部委託化だ。具体的には小規模薬局の一包化業務を大型機器がある調剤薬局に業務委託することだ。しかしこれを阻む規制が、薬機法施行規則第11条の10の「薬局の開設者は、調剤の求めがあった場合には、その薬局で調剤に従事する薬剤師にその薬局で調剤させなければならない」である。これにより調剤の外部委託は現在では認められていない。こうした点から今回の医療介護ワーキンググループでは、調剤業務の外部委託を取り上げた。ワーキンググループではファルメデイコの狹間研至社長から保険薬局の調剤業務の外部委託と、それに関連して薬剤師1人あたり40枚の処方箋規定の見直しが提案された。これに対して厚生労働省側は、「調剤業務の外部委託に関しては、処方箋を応需した薬局の責任の下、医療の安全を確保することが可能か、対人業務の充実に資するかなどの検討が必要」とし、今後の検討課題とした。 調剤業務の外部委託で、小規模薬局の薬剤師が在宅に向かえる日がくることを期待したい。武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

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