慶応大・東京歯科大、攻めの統合 医療系4学部強みに


私立大の医学部と歯学部の両分野で実績と伝統のある慶応義塾と東京歯科大学が26日、合併協議入りを明らかにした。少子化や歯科医の供給過剰で競争環境が厳しくなるとの危機感のもと、攻めの統合を目指す。「医・歯・薬・看護の医療系4学部がそろうことは非常に大きな強みになる」。慶応義塾の経営幹部は26日、今回の合併協議開始についてこう話した。慶応大は現在10学部で構成。合併が実現すれば医療系4学部を含む11学部となる。経営幹部は「各学部の存在意義が明確で、重複がない。慶応と東京歯科の双方にメリットがある」と語った。「総合大学」を名乗っていても、ここまで幅広い学部を持つ大学は少ない。教育・研究面での協業に加え、大学のステータス向上を狙える。合併協議は東京歯科大側が申し入れた。関係者によると、慶応側を前向きにさせたのは東京歯科大が私立歯科大の中でブランド校として知られることだ。歯科医師国家試験の合格率も高く、学生募集も堅調で、経営状況も良好だ。慶応義塾高など傘下校の生徒は進路選択の幅が広がる。歯科医志望の生徒は、これまで他大学に進学するしかなかった。歯学部に内部進学できれば傘下校の魅力も高まり、学校法人全体に恩恵が及ぶ。政府は大都市の私大の定員増を厳しく抑制し、慶大も自力での歯学部新設は難しい。一方で2008年の共立薬科大との統合で得た法人合併のノウハウがある。合併戦略なら定員規制などのハードルを越えてスケールメリットを追求できる。医学・歯学研究で相乗効果の期待もある。例えば要介護の高齢者の歯周病を放置すると口内の細菌が体内に入り、誤嚥(ごえん)性肺炎など死に至る全身感染症のリスクが高まる。両大学は07年度からがん分野の人材養成でも連携している。義歯を使った治療などは精密工学も重要で、慶大の理工学部が持つ先端技術の応用などが見込める。口腔(こうくう)衛生の向上で虫歯のある人が減り、歯科医は供給過剰が指摘される。定員割れに陥った私大歯学部もあり、経営環境は厳しくなっている。両大学は歴史的にもゆかりが深い。東京歯科大の創設者、高山紀斎は1870年に慶応義塾に入塾し、現在の慶大三田キャンパス近くに、東京歯科大の前身に当たる高山歯科医学院を開校した。慶大は首都圏の6カ所にキャンパスを持ち、学生数は大学院を含め約3万3千人。東京歯科大は歯学部と大学院歯学研究科、短期大学を持ち、首都圏の3キャンパスで計約1100人が学ぶ。

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