薬剤師の環境大きく変わる1年に


2023年が幕を開けた。薬剤師を取り巻く環境は年々変化するが、いよいよ今月下旬から電子処方箋の運用が始まる。システムや医療機関の体制整備は遅れ気味で、運用開始後も電子処方箋が急増する状況ではないが、後で振り返ると23年は変革の節目になった年と捉えられるかもしれない。電子処方箋は、紙ではなく電子的に処方箋の運用を行うもの。医師が発行した電子処方箋は、クラウド上の電子処方箋管理サービスに蓄積され、薬局薬剤師は処方情報を取り込んで調剤を行う。調剤後は、調剤内容を含む電子ファイルを同サービスに送信し、医師らと共有する。紙に印字された処方情報が電子化されるだけではなく、蓄積した情報を活用し、様々な情報を共有するシステムとして運用されることが大きな特徴だ。医師や薬剤師は、直近のデータを含む過去3年分の薬の処方、調剤情報を閲覧することが可能で、診療や調剤に反映できる。蓄積されたデータに基づき、処方や調剤時に患者の服用薬との重複投薬や、併用禁忌を同サービスでチェックできる仕組みも設けられる。これまで薬局が複数の医療機関の処方箋を応需し、患者の薬物療法を一元的に管理することが医薬分業のメリットの一つとされてきた。何年先になるかは分からないが、電子処方箋が普及すれば、処方や調剤情報の一元化は同サービスが担うことになる。医薬分業のメリットとして、患者の生活に応じた薬物療法の最適化や投薬後のフォローアップなど、薬剤師ならではの専門性の高い業務の実践が、より問われることになるだろう。紙の処方箋の場合、患者が持参しやすい医療機関の近隣に立地することが薬局の経営戦略で重要だった。電子処方箋に加えてオンライン服薬指導が普及すると、立地では不利でも実力のある薬局が選ばれやすくなるかもしれない。中小の個人薬局にとってはチャンスだ。一方、資本力にものを言わせて大規模に電子処方箋を応需する仕組み作りが進み、別の形での競争が激化する可能性は高い。電子処方箋は、オンライン資格確認のシステムを基盤として医療情報を連携するサービスの一つだ。今後は、検査結果情報など連携する医療情報を拡充する方針が示されている。こうした将来の姿に対応した薬剤師の業務構築も求められる。今年は他にも、調剤業務の一部外部委託を可能とする規制緩和や、薬剤師の地域偏在解消、卒直後臨床研修体制の構築など、行方が気になる薬剤師関連のテーマは多い。医薬品販売関係では、OTC医薬品の新たな類型として日本薬剤師会が提案する「医療用一般用共用医薬品」の制度構築のほか、薬局におけるOTC医薬品販売時の薬剤師常駐規制の見直しなどが議論の対象になる。環境が大きく変わる1年となりそうだ。

関連記事

ページ上部へ戻る