はめるだけで筋力アップ パーキンソン病患者のリハビリへ、手袋開発


靴下メーカー「三笠」(本社・横浜市)と奈良県立医科大(橿原市)リハビリテーション科の真野智生准教授らが、パーキンソン病患者の手指の筋力改善に効果がある手袋を開発することに成功したと発表した。特殊な編み技術を使い、指の部分が外側に大きく反り返った形を実現。日常的に装着すれば、手指でつまむ力の大幅アップが期待できるという。将来は医療器具としてだけでなく、高齢者やアスリートの筋力増強グッズとして販売したい考えだ。医療機器の開発を巡って三笠が同大学と意見交換する中で、この形状の手袋を提案。真野准教授らが、手指の機能が衰えたパーキンソン病患者のリハビリに活用できると着目した。三笠によると、手袋はナイロンとポリウレタンを編み込んだもので、手指の部分が手のひらの反対側に大きく反り返った形状。手袋をはめながら生活することを想定し、指先が手袋から出るように設計した。装着すると、外側に向けた抵抗が指にかかる。その際の状態を測定すると、通常時より抵抗が約20%増えるというデータが得られたという。真野准教授らが2021年に入院中のパーキンソン病患者を対象に実施した臨床研究では、手袋を5日間装着して生活した結果、握力は7・4%アップ。親指と人差し指の先端でつまむ力は25・1%増えるなど、筋力改善に著しい効果が認められた。真野准教授は「生活の中では、つまむ動作や力が必要になる」と指摘。パーキンソン病患者のリハビリでは従来、ボールを握ったり、金属製の器具を手に装着したりしていたが、「繊維で編んだ手袋なので、違和感は少ないはず。リハビリのため日常的に装着してほしい」と期待を込める。開発・製造に携わった三笠奈良工場(葛城市勝根)の田垣内健・工場長は「パーキンソン病を患う人たちが日常生活を取り戻すことに役立てばうれしい」と話している。【浜名晋一】

関連記事

ページ上部へ戻る