iPS細胞から目的の細胞を作り出す過程について、理研などの研究チームは、人工知能(AI)に制御されたロボットが自動的に最適な細胞の培養条件を探し出す技術を開発したと発表した。手作業による細胞の培養は習熟が必要で、品質にばらつきが出やすい。AIを使って「匠(たくみ)の技」を再現することで、実験の精度や効率の向上が期待できる。人の手が加わらない「自律実験」は、再生医療や細胞生物学の分野では初という。研究チームは今回、実験用ヒト型ロボットと専用に開発したAIを使い、人体のさまざまな細胞になれるiPS細胞から網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を作る実験をした。研究チームによると、手作業による培養方法をプログラムとしてロボットに記憶させ作業させたところ、RPE細胞は得られたが、効率が悪かった。そこで、培養に使う薬剤の濃度や処理時間など七つの要素の組み合わせ条件をAIが自動的に調整してロボットに作業させることを繰り返し、それぞれの結果を検討。最終的に144条件の中から、最適な培養条件を探し出した。開発した理研の神田元紀上級研究員は「ロボットとAIが煩雑な作業を担当して、人間はより創造的な仕事に注力できるようにしていきたい」と話した。【田畠広景】