「オプジーボ」などの免疫の働きを利用したがん治療薬を投与した患者のうち、脳の「下垂体」という場所に副作用が出た人は、出なかった人と比べ生存する期間が長かったと、名古屋大のチームが1日付の英科学誌に発表した。薬の作用が発揮されやすい人は、副作用も出やすいのが原因とみている。チームは今後、治療前に下垂体の副作用が出るかどうかを予測する指標を探す方針。有馬寛教授は「副作用を適切に診断し、治療すれば生存期間が延びることが分かった。薬の効果を予測できる可能性もあるので、副作用が疑われる症状が出た場合は検査してほしい」と話している。チームの岩間信太郎講師らは2015年11月以降、名古屋大病院の非小細胞肺がんと悪性黒色腫の患者計174人にオプジーボなどのがん免疫治療薬を使い、約3年間、経過を追跡。肺がんの108人中4人、黒色腫の66人中12人に下垂体の副作用が出た。患者の半数が亡くなるまでの期間を調べると、肺がんでは、下垂体の副作用が出なかった場合は441日だったが、副作用が出た場合はこの期間に死亡した人はいなかった。黒色腫では、副作用が出ると885日、出ないと298日で、いずれのがんも副作用が出た方が生存期間が長かった。下垂体は生きる上で必要なさまざまなホルモンを分泌している。副作用で機能が低下すると、倦怠(けんたい)感や食欲不振などの症状が出るため、不足したホルモンを薬で補う治療をする。〔共同〕