肝臓毛細血管をコーティング=遺伝子治療効率向上―川崎市財団・東大


がんなどの遺伝子治療の効率を上げるコーティング剤を開発したと、川崎市産業振興財団や東京大、量子科学技術研究開発機構のチームが27日までに発表した。治療用の遺伝子を入れたウイルスや人工微粒子が肝臓で除去され、患部に届きにくくなる問題を解決するため、安全な材料で肝臓の毛細血管の内側を一時的にコーティングすることにマウス実験で成功した。
 遺伝子治療の対象によっては目への注射や脳脊髄液への注入が必要になるが、このコーティング剤が実用化されれば、静脈注射や点滴で済む可能性がある。東大の内田智士特任助教は「適用疾患が広がり、コストも安くなる」と説明。同財団の片岡一則ナノ医療イノベーションセンター長(東大特任教授)は「近い将来に臨床現場で使えることを期待している」と話した。論文は米科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載された。
 このコーティング剤は、アミノ酸の一種であるリシンが連なった「オリゴリシン」に鎖状の高分子化合物「ポリエチレングリコール」を2本結合したもの。マウスへの投与では肝臓の毛細血管だけに集まり、血管の内側を一時的にコーティングした後、6時間以内に剥がれて胆汁に流れ出た。
 このコーティング剤をあらかじめ使うと、アデノ随伴ウイルスによる心筋や骨格筋への遺伝子導入のほか、人工微粒子によるがんへの遺伝子導入の効率が大幅にアップした。 (C)時事通信社

関連記事

ページ上部へ戻る