人工呼吸器の管理などが必要で自宅で暮らす医療的ケア児が、滋賀県内には287人いることが県の実態調査で分かった。県が調査を実施するのは初めてで、担当者は「大枠をつかむことができた。今後は医療的ケア児や保護者が地域で安心して暮らせるよう支援体制を考えていきたい」としている。2019年12月1日時点で県内に住む0~18歳の子どもを対象に、管で胃などに栄養を直接入れる「経管栄養」や人工呼吸器装着など9項目の医療的ケアについて、市町や学校などを通して調べた。いずれかの医療的ケアが必要なのは287人(半年以上の入院・入所の子どもを除く)。年齢別では3歳が26人で最も多く、4歳と12歳が各21人、5歳20人が続いた。市町別では大津市68人、草津市33人、東近江市28人の順で多かった。必要な医療的ケア(複数回答あり)は、「経管栄養」が最も多く191人。続いて「口腔(こうくう)や鼻腔(びくう)内などの吸引」168人、ボンベなどで必要な量の酸素を補う「酸素補充療法」96人、「人工呼吸器装着」95人。「気管切開」も76人いた。医療的ケアの数は一つが102人で最多だったが、二つ63人、三つ44人と続き、七つも1人いた。二つ以上の複数のケアが必要なのは177人で60%を超えた。歩行状況では、一人で歩ける「独立歩行」は78%(225人)が不可能だったが、歩ける人は22%(62人)いた。また、重度の知的障害と重度の身体障害がある重症心身障害(重心)の認定を受けているのは56%(162人)だった。体調が悪いときに住まいの近くで相談できる医師については、「いる」が168人(59%)、「いない」が118人(41%)だった。◇医療的ケア児は増える傾向にあり、市町立の小中学校などでの受け入れが課題の一つになっている。県の医療的ケア児の調査によれば、年代別では小学生が92人で最も多く、乳児期69人、幼児期59人、高校生34人、中学生33人だった。未就学児全体では計128人になり、小学生の人数を上回った。文部科学省による学校での医療的ケアの実態調査(昨年11月1日時点)によれば、県内の県立・市町立学校に在籍する医療的ケア児は小学校19人、中学校1人。高校はいなかった。一方、特別支援学校10校の小学部に89人、中学部41人、高等部50人と、多くが特別支援学校へ進学している。ただ、県の実態調査では、未就学の医療的ケア児128人のうち46人(36%)が、日中にこども園や保育園、幼稚園へ通っている。県は2015年度、市町の小中学校が医療的ケア児を受け入れるために看護師を配置する場合の補助事業を開始。16年度には文科省も補助事業に乗り出したが、県は市町の負担を減らすため、県独自に事業費の3分の1を上限ありで補助している。市町が配置した看護師は15年度は1市の1校1人だったが、16年度には6市の9校9人に。今年度は11市町の23校23人となり、毎年増え続けている。県教委の担当者は「学校や市町教委との話し合いで、地域の小中学校を選ぶ保護者が増えてきている。医療的ケア児が安心・安全に学べるようにすることは大切だ。市町の看護師配置の支援をしていく」と話す。一方、文科省は、特別支援学校以外の地域の小中学校などでの受け入れや支援体制を整備するため、拠点校の設置を検討。新年度予算の概算要求で、全国5カ所でのモデル事業の研究費を要望している。(寺崎省子)◇〈医療的ケア児〉 2016年の改正児童福祉法で初めて「人工呼吸器を装着している障害児、その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」として位置づけられた。身体障害や知的障害はなく、医療的ケアだけが必要な子どももいる。医療の高度化に伴い全国的に増加傾向にある。厚生労働省の研究班が公的医療保険の診療報酬のデータを基に在宅の医療的ケア児(0~19歳)の人数を推計したところ、2019年度は2万155人と初めて2万人を超え、15年度の1万7209人より約3千人増加。この10年では2倍近くになっている。改正法は、地方自治体の努力義務として、医療的ケア児が、心身の状況に応じた適切な保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう、連絡調整の体制整備と必要な措置を講じるよう求めている。