厚生労働省の検討会は、2024年度から都道府県が開始する第8次医療計画の作成指針に、地域の実情に応じた薬剤師確保策の実施などを盛り込んだ取りまとめの意見案を概ね了承した。これまでの医療計画では医師や看護師の偏在問題や確保対策が記載されてきたが、薬剤師確保策が示されるのは初めてとなる。医療計画全体で見ると、病院薬剤師と薬局薬剤師の役割をそれぞれ明確にし、就労状況の把握、地域の実情に応じた薬剤師確保策を実施するよう求めている。特に薬局薬剤師に比べて人員不足が指摘されている病院薬剤師については、修学資金貸与や病院への薬剤師派遣など、地域医療介護総合確保基金を積極的に活用すること、都道府県の薬務主管課と医療政策主管課が連携して取り組むことなども明記されている。厚労省検討会では、医療計画に薬剤師確保策を記載する重要性に加え、薬剤師の卒後に病院研修を義務付けることなどが意見として挙がった。都道府県単位で薬剤師がどこまで必要になるのか、医薬品提供体制をどう確保していくかが重要な課題となる中、都道府県単位で決定している医療計画において、明確に薬剤師確保が記載されるのは大きな前進と言える。5疾病6事業、在宅医療の各医療計画でも薬剤師確保に向けた議論が進んでいる。その中でも注目したいのは在宅医療だ。在宅医療の現状を把握するための指標例案として、地域連携薬局を位置づけることは見送られたが、「小児の訪問薬剤管理指導を実施している薬局数、小児の訪問薬剤管理指導を受けた患者数」の追加が提案された。医療的ケア児に対する在宅医療提供体制が求められているものの、小児に使用可能な医薬品は3割程度にとどまるのが現状であり、今春の調剤報酬改定では医療的ケア児に薬学的管理や指導を行った場合の評価として「小児特定加算」が新設された。調剤報酬上の対応が行われたとはいえ、小児在宅医療に参加する薬局や薬剤師はごく一部に過ぎない。小児の訪問薬剤管理指導料の算定回数が13年に1カ月当たり1000回に満たなかった実施状況から、21年には5000回近くまで増加したが、入院から在宅に移行する場合、患者の自宅近くで対応可能な薬局が見つからない状況は今もなお起こっている。チーム医療に薬剤師が加わる難しさが指摘されているだけに、小児の訪問薬剤管理指導の実施体制が医療計画に位置づけられる意味は大きい。都道府県の薬務主管課と医療政策主管課が連携して、医療的ケア児の支援に薬剤師が関与していく体制づくりを望みたい。都道府県が主導的な役割を担うものの、薬務主管課のマンパワーは不足しており、実施体制には不安も残る。薬剤師会などとも連携し、医療計画を確実に実行していく仕組みも考えなければならない。