国民負担の在り方争点 社会保障審議会 介護保険部会


厚生労働省は9月26日、第98回社会保障審議会・介護保険部会を開いた。主な論点は、給付と負担について。次の2024年度の介護保険制度改正に向けた協議を進める同会では、膨張する介護費を賄っていく「国民の負担のあり方」が1つの争点となり、委員から様々な意見が寄せられた。膨張する介護費の賄い方今回の具体的な検討項目は、①被保険者範囲、受給権者範囲、②補足給付に関して、③多床室の室料負担、④ケアマネジメントに関する給付の在り方、⑤軽度者( 要介護1 、2)の予防事業への移行、⑥負担割合の基準に関して、⑦福祉用具貸与に関して、⑧その他(認定期間、リスクマネジメント、高齢者虐待、福祉用具について)の8項目。主な焦点となったのは利用者の負担で、厚労省側は制度の持続可能性を担保する観点から引き上げを促す声があることを説明した。これに対し、介護の事業者や専門職、利用者の立場を代表する委員らは、総じて慎重論を展開。小泉立志委員(公益社団法人全国老人福祉施設協議会副会長)は、「要介護1・2での適切なケアは、在宅生活を継続するために必須。自立支援のケアの劣化が危惧される」と不安視。染川朗委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)は、「ケアマネジメントの利用者負担は、高齢者等の要介護状態の悪化などの影響に加え、セルフプランや利用者の希望を必要以上に反映させたプランが増えることにより給付費の増加につながることも懸念され、持続可能性に悪影響を与える恐れもある」と主張した。一方、保険料を支払う現役世代や、企業側の委員は、利用者負担の引き上げを具体化するよう要請した。河本滋史委員(健康保険組合連合会専務理事)は、「利用者負担は原則2割とすべき。現役世代の負担は限界に達しており、いずれ制度が破綻することになりかねない。踏み込んだ見直しをすべき」と主張。岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、「介護保険制度を維持するためには、受益者負担の導入を検討すべき」と提言した。また、部会長代理を務める野口晴子委員(早稲田大学政治経済学術院教授)は、「今後の更なる高齢化、生産年齢人口の急激な減少を乗り越えるために、制度見直しは不可欠。負担をお願いできる高齢者に相応の負担を頼んでいくことは、避けられない」と語った。厚労省は年内に大枠の方針を決める予定で、最終的には政府・与党が決断を下すことになる。物価高騰の動向や政権の支持率なども少なからぬ影響を与えるとみられ、これから年の瀬にかけての議論には、紛糾が生まれると、予測される。

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