福島医大医学部付属生体情報伝達研究所細胞科学研究部門の井上直和准教授(46)らの研究チームが、無脊椎動物と脊椎動物に共通して存在し、受精に必ず必要になる物質を世界で初めて発見した。多細胞生物が生まれてから約10億年にわたって受精に関与している物質が発見されたことになり、研究チームは「今回の発見は、人間がどう有性生殖を確立したかの解明につながる」としている。英国科学誌eLife(イーライフ)に4月19日に公表した。研究チームが発見したのは、精子細胞の表面にあるたんぱく質「DCST1」と「DCST2」の2種類。線虫やハエなどの無脊椎動物にとって受精に必須な物質であることが知られていたが、研究チームは二つの物質がマウスにも存在することを突き止め、これらを欠損させたマウスが線虫やハエと同様に不妊になることを確認した。井上准教授は二つの物質がヒトの精子にも存在することを指摘。「不明な点が多い受精を巡る研究にとって大きな一歩となった」とした上で「遠い将来、人間の不妊治療にもつながるかもしれない発見といえる」と成果を語った。研究には、福島医大医学部付属生体情報伝達研究所細胞科学研究部門の和田郁夫教授と産業技術総合研究所の萩原義久氏が加わった。