テルモ「1瓶7回」の注射器量産へ ワクチン無駄なく


テルモは米ファイザー製の新型コロナワクチンを1瓶から7回接種できる注射器を開発した。3月末から国内で量産し、まず約2000万本を2022年3月末までに生産する。日本人の体形にあわせて針を短くし、本体と一体設計にすることで注射器に残る薬液の量を減らした。通常の注射器では5回、特殊な注射器でも6回しか接種できなかった。政府は医療現場での活用を容認する方向だ。5日に厚生労働省の製造販売承認を得た。甲府工場(山梨県)の既存設備で生産する。注射器は政府が全量買い取る。今春以降に順次出荷できる見通しだが、具体的な供給計画については今後、政府と詰める。22年4月以降は製造設備を追加して増産する。厚労省の要請を受けて1月末に開発に着手した。注射器に残る薬液の量が少ない特殊な「ローデッド品」の一種だ。2009年にインフルエンザワクチン向けなどに発売した皮下注射用を改良し、コロナワクチンに使われる筋肉注射用に対応させた。筋肉注射用の標準的な針は長さ25ミリメートルだが、新製品は長さ16ミリメートル。テルモは、欧米人に比べて皮下脂肪が薄くてやせ形が多い日本人の体形では16ミリメートルでも筋肉に届くと判断した。薬液が残る量は0.002ミリリットルで、従来の一般的なローデッド品に比べて約15分の1に減らせる。針が短くなりさらに注射器と一体化したことで内部にとどまる薬液量が減った。社内検証では米ファイザー製ワクチン1瓶と同じ量の薬液から7回分を採取できた。ファイザー日本法人は「コロナワクチンの取り扱いを規定した添付文書では1瓶当たりの内容量はあくまで6回分」としており、7回接種可能の注射器の使用は想定外となる。一方、厚労省は「7回接種できる性能があるなら否定するものではない」としている。千葉大学コロナワクチンセンター長の猪狩英俊医師は「針の太さや長さが有効かつ安全にワクチン接種するために十分なものであれば限られたワクチンを最大限に生かすために7回取れる注射器を使いたい」としている。

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