島津製作所は1日、頭部と乳房の検査に特化した世界初のPET(陽電子放射断層撮影)装置を国内で発売した。従来の全身用と比べ、約2倍の解像度を実現し、脳腫瘍、乳がんの早期発見や治療効果の判定に役立つほか、認知症研究にも貢献が期待できる。PET装置によるがん検査では、大量にブドウ糖を代謝するがん細胞の特性を利用。放射線を出す薬剤「FDG(疑似ブドウ糖)」を体内に投与し、検出器でとらえた集積量のデータを画像化する。同社は2014年に高解像度の乳房専用PET装置を発売。新装置は、ドーナツ型の検出器が位置を変えながら90度回転し、1台で頭部と乳房の両方に対応する。価格は1台1億5千万円程度と想定し、発売後5年で50台の販売を目指す。高い解像度は、検出器の直径を頭部に合わせて小さくしたほか、新たな受光素子を採用するなどして実現。これにより、小さな病変が発見しやすくなり、病変の悪性度も正確に把握できるという。脳内における特定のタンパク質の蓄積状況を追跡することで、認知症の予防法や創薬研究への活用も見込めるという。同社は「認知症診断におけるPET検査の重要性は今後高まるだろう。社会のニーズに応えていける装置だ」としている。