小林化工に116日の業務停止処分


福井県あわら市の小林化工が製造する爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入した問題で、福井県は2月9日、医薬品医療機器法に基づき、同社に116日間の業務停止処分と業務改善命令を出した。116日間は医薬品メーカーへの行政処分で過去最長となる。県によると、この薬を含む複数の製品で国の承認内容と異なる手順書の存在や、立ち入り検査用の虚偽の記録「二重帳簿」の作成、品質試験結果のねつ造など、多数の関係法令違反が長年にわたって行われていたことが確認された。県庁で同日、窪田裕行・県健康福祉部長が小林広幸社長に命令書を手渡し「116日間は決して短い期間ではないが、全社挙げて、再生のために力を尽くしていただくよう期待します」と述べた。小林社長は受け取った後、報道陣の取材に「甚大なる健康被害を起こされた被害者の方に対し、心から深くおわび申し上げます。福井県民の皆さまにも多大なるご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」と深々と頭を下げた。混入があったのは経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」の一部ロット。県は同錠の製造について▽2人で行うべき原料取り出し作業を人員不足により1人で実施▽承認外手順書が存在▽国が承認していない原料のつぎ足し▽虚偽の記録作成▽一部試験の未実施と試験結果のねつ造―などの実態があったと結論付けた。これらの不正は他の製品でも確認された。承認された方法から逸脱した製造や二重帳簿について「経営陣、製造管理者は黙認していた」と認定。背景として、医薬品事業の責任者が社内の監督を適切に行わず、品質管理部門が製造部門に対し適切な確認を行わないなどがあったとし「最大の問題は、経営層がこれら法令違反を把握していながら改善策を講じなかった点」とした。業務改善命令では、法令順守や役職員への教育、製造・販売に関連する業務体制の見直しなどを求めた。事業再開時期については、今後提出される業務改善計画の内容を踏まえ検討する予定で「業務改善が完了しなければ出荷再開はできない」としている。小林化工によると8日時点で、混入した錠剤を服用した239人から意識障害などの健康被害の報告があり、70代女性と80代男性の2人が死亡した。小林化工は1961年設立。従業員は約800人で、医薬品の売上高は370億円(2019年度)。これまでの医薬品メーカーに対する業務停止は、16年に熊本県熊本市の化学及血清療法研究所(化血研)が厚生労働省から受けた110日間が最長だった。

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