「地元学生」の採用強化 社会医療法人ペガサス(堺市)


離職防止にも 見学会に年間数百名堺市で病院及びクリニックのほか、介護老人保健施設などを運営する社会医療法人ペガサス。法人本部が置かれる馬場記念病院(同)では、地域の学生などを対象とした病院見学会を毎日実施するなど、その地域の人材の発掘・育成に尽力している。近年では、見学会をきっかけに法人に興味を持った学生が、本採用まで至っているほか、2014年には法人全体で、新卒者の1年以内離職率がほぼ0%となるなど、成果を上げている。同病院が実施する見学会「毎日が医療体験デイ」(以下・見学会)では、看護師・介護士を始め、PT・OT・ST、ソーシャルワーカーなど10以上の職種において、日々の業務の様子を間近で見学できる。所要時間はおよそ3~4時間。看護師の見学では、実際のユニフォームを着用して現場に入り、配膳のような簡単な業務をこなしてもらうなど、「体験」を重視するのが特徴。見学会は事前予約制で、電話もしくはSNSで申込を受け付ける。主なターゲットは卒業後に医療業界での就職を考えている学生だが、誰でも見学可能だ。内容は、見学を希望する職種やその目的などに合わせて個別に設定する。例として、「リハビリ職に就きたいと思うが、具体的には決まってない」といった学生には、PT・OT・STの違いについて概説した後、それぞれを見学する流れとなる。就きたい職種が明確に決まっている学生には、「その職種にフォーカスした内容とし、現役職員から詳しく話を聞ける時間を設ける」など、柔軟に対応する。見学会の人気職種は看護師で、ユニフォーム姿で撮影する記念写真が好評だという。田中恭子理事は「全ての見学者を総計すると、年間数百名は見学に来ます。それをきっかけに実際に採用に至ったケースもあることから、蒔いた種が順調に育ってきていると感じています」と現状を評した。地域人材に注目、離職率0%達成見学会を開催する狙いは、「地域の人材の採用」による、定着の促進だ。同病院は脳血管疾患の治療に秀でており、その評判もあってか、日本全国から求人応募が来るという。「しかし、遠方から来る人の定着率は芳しくありません」と田中理事は言う。その影響もあり、10年ほど前、法人の1年以内の離職率は20%を超え、業界の平均を上回る状況が続いていた。そこで、地域の医療・介護人材の発掘と育成へ採用戦略をシフト。地域の学生などへのアプローチの一環で、気軽に病院見学に来てもらえるように、10年前より現在のスタイルで見学会をスタートした。現在では、学生個人のほか、社会科見学や職場体験といった行事など、学校単位での見学も増加。見学会などを通じ、地域の学校約50校と継続的なつながりを持つようになり、その学校の卒業生の採用も増えた。
この数年、新卒の1年以内の離職率は1%以下となり、大幅に改善している。人事部門が熟練 学校と連携密に田中理事は離職率が改善した理由を、「見学会の直接的な効果のほか、人事部門の能力が大幅に強くなったこともあります」と分析する。
見学会は法人の人事部門が担当しており、見学会の内容を決めるに当たっては、現場職員との入念な打ち合わせを行う。それにより、職員個人の持つ特技・強みなど、アピールポイントの把握が進んだことから、学校などへの訴求力が向上したという。田中理事は、「医療・福祉の現場は『死』に直面するなど、避けようのないストレスにさらされる職場であると言えます」と指摘し、精神サポートの重要性を説く。「家族、昔からの友人、恩師など、精神的にサポートしてくれる人が近くに居る職員なら、そのようなストレスにうまく対処できるかもしれません。その点でも、地域で育った人材は定着が期待できます」。

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