コロナで心理的負担、医療スタッフ支える緩和ケア手法 塗り絵でセラピー、共通リボンで一体感


新型コロナウイルス患者を受け入れる病院で医療スタッフの負担が増える中、滋賀県彦根市の彦根市立病院(八坂町)でも独自の手法で感染症病棟のメンタルケアに取り組んでいる。重度患者らの心身の苦痛を和らげる緩和ケア認定看護師が、塗り絵を使った色彩療法や共通のリボン着用を通じて一体感を醸成。職員一丸となってコロナに備える。

 緩和ケア病棟の認定看護師、秋宗美紀看護科長。通常業務の傍ら、新型コロナ対策に従事する医療スタッフや患者の電話相談を院内で担当する。これに加え、少しでも心の負担を減らしてもらおうと独自のケアを始めた。市立病院は軽中等症の患者を受け入れている。現場の看護師らの悩みとして、自身と家族の感染リスクのほか「濃厚接触を避けるため、患者に寄り添う看護師としての仕事ができないことに大きなストレスを抱えている」と指摘。患者の背中をさすることもできず、家族の面会を制限せざるを得ないことに負い目を感じるケースがみられるという。秋宗さんは新型コロナの入院患者がいったんゼロになった6月、感染症病棟の看護師と事務員の計19人に塗り絵を使った色彩心理療法を実施。4、5人のグループに分けて体調や心理面を聞き取った後、色鉛筆で花や鳥など簡単な絵を彩色してもらった。配色や塗り方の自然さ、周囲との会話からタイムリーに素直な気持ちをつかみ、上司に伝えるなどして悩みを共有した。カラーセラピストの資格取得を機に、緩和ケア病棟で重度患者の気持ちを整理してもらうのに用いていた手法。「幸い、精神的に危ういスタッフはいなかったが、疲労や責任を感じている人も。不謹慎な言い方かもしれないが、経験を楽しむ気持ちも持ってほしい」と助言する。また、感染症病棟のスタッフだけでなく全職員で一丸になろうと「みずいろりぼんプロジェクト」と題し、工作用モールで手作りした直径約3センチのリボンを希望者の名札に着けてもらう取り組みを始めた。青色は琵琶湖をイメージした。秋宗さんは「心配や周囲への不満が増えて苦しい中、みんなが同じリボンを着けていることで安心感を持ってもらえれば」と話す。市立病院は7月中旬から再び新規入院者が増えている。今後は感染症病棟の医師や看護師を取材した院内誌を発行し、経験を共有するつもりだ。「医療関係者も孤独を抱えている。スタッフの入れ替わりもあるため、継続的に支援したい」

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