夢をみる時の浅い眠り「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」のうち、どちらが学習に重要な役割を果たすのか――。寝ている間に脳が学ぶ仕組みの一端を、米ブラウン大の佐々木由香教授らのグループが明らかにした。国際科学誌ネイチャーニューロサイエンスに発表した。睡眠が学習や記憶に重要な役割を果たすことはわかってきたが、その詳しい仕組みは謎で、レム睡眠とノンレム睡眠の役割も長年、議論になっていた。研究グループは、18~30歳の81人の被験者に参加してもらい、画像を使った「視覚学習」を使って脳の働きを調べた。雑多な線で見分けにくくした、しま模様を繰り返し見せ、しま模様の方向の識別率を上げる訓練で、意識しない間に脳が学習したことを客観的に調べることができる。学習Aの後にテストをして、90分寝てもらい、脳波で睡眠のパターンを測りながら、視覚をつかさどる脳の領域の働きをMRIで調べた。睡眠後に再び学習Aのテストをした後、別の視覚学習Bを行った。MRIで調べると、ノンレム睡眠の間は通常より、その領域が興奮していることが観察された。脳の中で学習が繰り返され、神経細胞の新しいつなぎ目ができ、神経回路が変化しやすい状態になっていると推定された。興奮の変化が大きい人ほど、睡眠後に学習Aの成績がよく、ノンレム睡眠中に学習を繰り返していることが示された。一方、レム睡眠の間は通常より抑制的になり、神経回路が変化しにくい状態になり、学習したことを固定、記憶していると推定された。レム睡眠があると、学習Bを行った後も学習Aの効果が残っていたが、レム睡眠がないと、BによってAの効果が消されてしまうこともわかった。「ノンレム睡眠かレム睡眠の一方だけが効くのではなく、ノンレム睡眠で学習し、レム睡眠でその効果を固定し、両方が相補的な役割を果たしていることがわかった」と佐々木さんは話している。(瀬川茂子)