医療機器が水没、カルテ洗う職員 熊本の地域医療に打撃


温泉街に濁流がなだれ込み、市街地は大量の水に沈んだ。梅雨前線による豪雨は7日にかけて九州北部にも広がり、各地で土砂災害や浸水が相次いだ。最初に被害を受けた熊本県の球磨(くま)川流域でも雨は降りやまずインフラが寸断されたままで、地域医療の復旧を妨げている。熊本県では、28の医療施設と28の薬局が浸水被害を受けた。医師や看護師らは院内の泥をかき出し、片付けに追われながら、医療態勢の立て直しに力を注ぐ。18人の死亡が確認された人吉市。氾濫(はんらん)した球磨川沿いの市中心部には病院が並ぶ。人吉橋のたもとにある人吉記念病院では7日、職員らが診察室から泥をかき出す作業に追われていた。「人が通れる道ぐらいは作っておかんと」。益満務(ますみつつとむ)院長(71)が手を止めてつぶやいた。4日の早朝、夜勤の職員が水位の上昇に気づいた。3階の入院患者を支えて階段を上り、4階に避難させた。濁流は診察室のある2階をのみ込んだが、患者は無事で、翌日に他の病院へ転院搬送された。ただ、医療機器が水没。停電が続いており、たんの吸引もできない。かかりつけ患者は約200人。院内には泥や枝が積もり、再開のめどは立たない。200メートルほど離れた球磨(くま)病院でも7日、男性職員(48)らがカルテを1冊ずつ水洗いしていた。事務室のパソコンやカルテは泥にまみれ、外来診療ができずにいる。「情報がないと治療ができない。紙のカルテは最後の頼みの綱」4日早朝、当直だったこの職員は看護師ら20人に指示し、医療器具や薬を上階に移動させた。重要な医療機器がある部屋の入り口には、浸水を防ぐため布団やシーツを敷き詰めた。「下には絶対に行かないように」。3~6階にいた約250人の入院患者に院内放送で伝え、朝食や点滴を普段通り続けた。1階は水没したが、患者に大きな混乱はなかったという。堤病院付属九日町(ここのかま…

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