人間の細胞から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)で傷ついた筋繊維を修復する骨格筋幹細胞を作製し、筋力が次第に衰える難病「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」を再現したマウスに移植したところ筋力の改善を確認したと、京都大iPS細胞研究所の桜井英俊准教授(再生医学)らの研究グループが3日、米科学誌「ステム・セル・リポーツ」電子版に発表した。DMDは、筋細胞を支える「ジストロフィン」というタンパク質が作れなくなり、全身の筋力が低下する疾患。主に男児に発症し、国内の推定患者数は約5千人。筋ジストロフィーの中でも症状が重く、根本的な治療法は確立していない。今回の成果は将来的な治療法の開発に役立つことが期待される。グループは、iPS細胞から骨格筋幹細胞を培養する際に、特定の遺伝子に着目することで高効率で作製できることを発見。この手法を用いて作り出した幹細胞をマウスの脚に移植すると、ジストロフィンが存在する筋繊維が再生し、マウスの筋力測定でも若干の改善が見られた。今後、より治療効果の高い骨格筋幹細胞を安定して作る方法の確立が必要となるが、桜井准教授は「将来的には指や呼吸筋など広範囲の筋肉に投与して生存を助けられるような治療法につなげたい」としている。