【第57回日薬学術大会】分科会の見どころ・聞きどころ 皆で繋ぐ小さな命-小児在宅医療の明るい未来に向かって


第57回日本薬剤師会学術大会座長
日本薬剤師会常務理事
川名三知代
埼玉県薬剤師会常務理事
池田里江子近年の小児医療の進歩により、重症の難治性疾患の小児も病院での急性期治療を終えて、人工呼吸管理や栄養管理等の医療的ケアを継続しながら在宅生活へ移行する機会が増加し、医療的ケアを継続しながら成長する小児(以下、医療的ケア児)の在宅医療のニーズが高まっている。2019年の厚⽣労働省障害者総合福祉推進事業「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査」では、医療的ケア児の家族は、「慢性的な睡眠不足である」「⾃らの体調悪化時に医療機関を受診できない」「医療的ケアを必要とする子供を連れての外出は困難を極める」の問いに対し、回答者の6割以上が「当てはまる」「まあ当てはまる」と回答しており、一般的な家庭では当たり前と考えられることが、できていない状況にあることが指摘されている。同調査にて母親から得られた回答からは「命の危険と隣り合わせで、目が離せない。慢性的な不眠で、とてもきつい」「昼夜問わずの管理があるので、まとまった睡眠がとれない」「睡眠時間がほとんどなく、連続で1時間以上睡眠できない。睡眠不足で頭がボーっとしている」と24時間365日の介護を背負いこむ様子が読み取れる。父親は「仕事帰りや休⽇は休みたいが⽇中一⼈でみている妻のことを考えると休むわけにはいかないと感じる」、きょうだいは「多少の体調不良は放って置かれる。⺟に甘えたくても次にされて相手にされない」と回答しており、患児および家族の生活の質の確保へ向けた支援体制を速やかに構築する必要性が生々しく伝わってくる。一方、21年の医療的ケア児支援法の成立により、自宅で暮らす医療的ケア児やその家族への支援が強化されつつある。また、22年の調剤報酬改定では、医療的ケア児に対する薬学的管理が評価され、小児特定加算も新設された。薬剤師の知恵と工夫によって、家庭での医薬品に関する困りごとを解消し、家族らしい当たり前の生活を取り戻せるよう支援していこう。本分科会が、先駆者たちの経験を共有し、子供たちの明るい未来に向かってこれから何をすべきか一緒に考える機会となることを願っている。(川名三知代)

関連記事

ページ上部へ戻る