生物が飢餓状態に陥った際、肝臓から血中に放出されるたんぱく質が食欲を増進させるとともに全体のカロリー消費を抑えて、生命を維持する働きをしていることを東北大などの研究グループが解明した。このたんぱく質は糖尿病患者の食べ過ぎにも関わっているといい、研究グループは症状改善につながる可能性があるとしている。論文は28日、米科学誌セル・リポーツの電子版に掲載された。研究グループはマウスを用いた実験で、食べ物が足りずに血中のインスリン濃度が低下すると、肝臓からこのたんぱく質「sLepR」が放出されることを発見。基礎代謝を上げて食欲を抑えるホルモン「レプチン」とsLepRが結合して、その働きを止めることが分かった。遺伝子操作でsLepRを分泌できないマウスを作成したところ、餌を減らしてもカロリー消費が減らず、半数近くが死んだという。また、糖尿病患者の血液を調べたところ、血糖値が高いほどsLepR濃度も高いと判明。sLepRがレプチンの働きを止めることで、血糖値が高くても食欲を抑えられなくなっていると考えられるという。東北大大学院の片桐秀樹教授(代謝学)は「肝臓は、食事が少ないことを認識して無駄なカロリー消費を節約するモニターのような機能を持っている」と指摘。「肝臓を対象にした治療で、糖尿病患者の食べ過ぎを抑えられるのでないか」と話している。