世界初、ナスの機能性実証 信州大発ベンチャーが高血圧改善サプリ


ナスといえば水分が多く、栄養価が高いイメージはない野菜だが、実は高血圧と気分の改善に効果があることを信州大などの研究グループが突き止めた。ナスにだけ豊富に含まれる「コリンエステル」という新発見の食品成分が効果を発揮。信大発ベンチャー「ウェルナス」(東京)がその成分を含むサプリメントを機能性表示食品として消費者庁に届け出、20日受理された。ナスの機能性を実証したのは世界初で、信大農学博士の小山正浩社長(34)は「自然由来で、安全安心。ナスの可能性を広げたい」と意気込んでいる。【錦織祐一】小山さんは信大学術研究院農学系の中村浩蔵准教授(食品分子工学)の研究室で機能性食品を研究。中村研究室は2006年、信州特産のソバのスプラウト(新芽)を木曽地方の「すんき漬け」の技術で乳酸発酵させた食品に血圧低下作用があることを発見。その中に含まれるコリンエステルが交感神経の活動を抑制する効果があることを突き止めた。さらに16年、ナスにソバ発酵食品より豊富にコリンエステルが含まれていることが分かった。ナス生産量日本一の高知県の農業技術センターや、一大産地の同県安芸市の生産者らと組んで品種などを研究。ナスの健康効果を確かめるための臨床試験も実施し、高めの血圧と落ち込みがちな気分を改善することを確認。その論文が19年11月に国際学術誌「ニュートリエンツ」に掲載され、機能性表示食品受理の根拠となった。小山さんは愛媛県西条市出身。長年、遺伝的な高血圧と睡眠障害に悩まされてきたが、自身の研究で劇的に改善したため「食による実効的な健康を届けたい」と17年に起業。18年には、毎日新聞社などが設立した「毎日みらい創造ラボ」の第1期グランプリと、信大が認定して支援する「信州大学発ベンチャー」の第1号に選ばれた。社名は、健康の「ウェルネス」と「ナス」を掛け合わせ、さらに健康を「成し遂げる」との願いを込めた。小山さんは「ナスは加工用途が少なく、規格外が年9万トンも廃棄されている。サプリメント原料として有効利用すればフードロス削減につながり生産者の収入も上がる」と期待する。問い合わせはウェルナス(03・6822・3107)。

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