奥羽大、産学官で甘草栽培 18日 安積高と覚書


郡山市の奥羽大薬学部は漢方薬の原料や医薬品などとして幅広く用いられている薬用植物「甘草(カンゾウ)」の市内の産地化に向け、産学官で栽培法の確立を目指す。市や民間企業と連携するとともに、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)認定校の安積高と十八日に覚書を交わし、地元で生産量を増やすための共同研究を進める。商品開発を視野に入れており、甘草を核に地域活性化を図っていく。奥羽大が事業全体の取りまとめや助言など中心的な役割を担う。奥羽大と覚書を交わす安積高は、主に甘草の育苗の分野に関わる。高校敷地内に専用の栽培施設を設け、同大と協力して甘草の苗を効果的に増やすための研究を進める。種からの栽培が難しいとされるため、挿し穂と呼ばれる草の一部を切り取って植え直す手法などの効果を確かめる。同校はSSHでのグループ研究の知見を生かす。郡山市は育苗に加え、栽培技術の確立に協力する。甘草の根は長さ一~二メートルまで伸びる場合もあるため、郡山市園芸振興センターでは収穫の際に農家の負担を減らす方法を調べる。プランターなどの資機材を用いて、地中深く根を張らないようにする育て方などを確かめる。郡山市にある製粉業の田中豊治商店が、製品開発などを担当する。甘草は砂糖の百五十倍ほどの甘さがあると言われるグリチルリチン酸を多く含むが、カロリーがほとんどないとされる。健康的な食品添加物として、商品開発を進める。栽培技術の確立後は、JAの協力を得て郡山市内の農家に栽培法を奨励する。市内には多くの菓子製造業者があり、甘草を使った健康スイーツなど六次化商品の開発や販売も視野に将来的には連携したい考えだ。プロジェクトを取りまとめる奥羽大の伊藤徳家教授(62)=生薬学、薬学博士=によると、甘草は国内で使用する分を中国からの輸入に頼っている。近年、肥満や糖尿病の予防に効果があるとされる研究成果が示されており、健康ブームを背景に需要が高まっているという。中国から輸入する甘草の価格高騰などで、国内の大手製薬会社で栽培に乗り出す動きが出ている。しかし、県内で大量の甘草を栽培する技術は確立されていない。奥羽大は産学官連携により「地元発の健康食材の一つ」としてアピールしようと、プロジェクトを始めた。福島県はメタボリック症候群に該当した県民の割合や急性心筋梗塞の死亡率が全国でも高く、健康状態の改善が大きな課題となっている。奥羽大は、将来的に糖尿病患者向けの新しい甘味食品への利用なども想定する。伊藤教授は「さまざまな連携を通して健康食品を開発し、地域活性化や健康づくりにつなげたい」と話している。

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