【脳を知る】「ストレスと脳」メンタルヘルスに青魚や野菜


皆さん、いかがお過ごしでしょうか。緊急事態宣言が5月末までにようやく解除されましたが、第2波が来る可能性もあり、まだまだ安心できない日が続いております。そのため、強いストレスを感じている方もたくさんいらっしゃると思います。今回は、精神的健康(メンタルヘルス)についてお話しします。精神と脳神経とは密接な関係がありますが、実はよく分かっていない部分でもあります。私たちは、ストレスを強く感じると脳の前頭前野の働きが低下し、抑鬱や不安、悲しみ、焦りなどを生じます。前頭前野は、脳の中で高度に進化した領域で、他の脳の部位よりもゆっくりと成熟し、20歳代になって完成するといわれています。前頭前野は精神のコントロールセンターです。通常はストレスが軽減すると、前頭前野の働きも元の状態に戻りますが、ストレスが非常に強い場合には、前頭前野が萎縮してしまい、回復能力が失われます。では、高ストレスはどういう人に生じやすいのでしょうか? ある研究では、食時時間が不規則な人、野菜を食べる頻度が少ない人、寝酒をする人が高ストレスのリスクが高い結果となりました。規則正しい食事時間と野菜摂取により、ストレスを軽減できる可能性があります。メンタルヘルスと関連性がある食品としては、特にイワシ、サバ、アジ、マグロなどの青魚です。青魚は蛋白(たんぱく)質が多いだけでなく、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。不飽和脂肪酸は血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、血液の循環をよくする効果があり、動脈硬化、心臓病などの血栓症、がんの予防効果はよく知られていますが、抑鬱症状の予防や鬱病への効果も最近は報告されています。また、適度な運動が前頭前野の血流を増加させることや、神経を修復させる栄養物質の分泌を促進させることで、メンタルヘルスの改善が期待されます。一方で、メンタルヘルスに強い影響を及ぼすのが睡眠障害です。睡眠障害は、肥満、高血圧、脂質異常や糖尿病などの危険因子であり、身体的健康にも悪い影響があります。睡眠障害の原因としては、夜間のカフェイン摂取、パソコンやスマートフォンの画面を長時間見続ける行為、不規則な食事時間、野菜や魚介類の摂取不足、塩分摂取過多、就寝前の飲酒、運動不足などがあります。これら不適切な生活習慣に注意して、睡眠障害を予防、改善させましょう。食事、運動、睡眠は、メンタルヘルスに強い影響があります。新型コロナウイルスのために、ストレスを強く感じる状況ではありますが、規則正しい生活習慣を行うことで、メンタルヘルスの対策につなげましょう。(和歌山県立医科大学 脳神経外科講師 八子理恵)

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