<せんだい進行形>最新技術でリハビリ支える 仙台ロボケアセンター開所1年 稼働率3~4割、知名度アップに課題


最新の医療用ロボットを駆使した歩行訓練サービスを提供する「仙台ロボケアセンター」が仙台市泉区に開所してから25日で1年がたつ。東北で唯一のロボケアセンターには、医療機関を退院後、より効果的なリハビリを続けたい利用者が通う。センターは専門スタッフの拡充と知名度アップに努める。(報道部・古賀佑美) ギシッ、ジー。ギシッ、ジー。足音とモーター音が交互に響く。5月中旬、富谷市の会社員男性(48)がロボットスーツ「HAL(ハル)」を両脚に着け、ランニングマシンを使った歩行訓練を受けた。 HALと連動したコンピューターが足の重心の位置や関節の動きをリアルタイムで計測する。トレーナーの平川勇希さん(33)が画面で計測結果を確認しながら、「良い感じで左足に体重が乗ってますよ」と声を掛けると、男性は笑顔を見せた。■自主トレに限界 男性は2017年12月、仕事中に脳出血で倒れ、左半身に感覚障害が残った。5カ月間入院し、職場復帰に向けて自宅で自主トレーニングに励んだが限界を感じ、昨年6月からセンターに週1回通う。 訓練を始めて4カ月後、6メートル歩行のタイムが8秒75から4秒94に縮み、手応えを感じた。単関節用のHALで硬直していた左腕の訓練も加えた。手足に血流が戻り、汗をかくことも多くなった。 男性は「我流だと分からない体の傾きに気付き、ロボットで矯正できる」と語る。目標は「体を自由に動かしていた昔の自分に少しでも近づくこと」。パン屋で左手に持ったトレーに好きなパンをのせる−。取り戻したい「日常」の記憶が原動力だ。■10〜70代が利用 センターはこの1年、宮城、山形両県の10〜70代が利用した。脊髄や頸椎(けいつい)の損傷、筋ジストロフィー、脳性まひ、低酸素脳症と疾患はそれぞれ異なる。稼働率は3〜4割程度で、加藤康則センター長(61)は「体を元のように動かし、自立した生活を送りたいと思う自宅療養者は多いはずだ。まずはセンターの存在を知ってほしい」と話す。 センターは医療機関からの紹介を受けやすいよう、理学療法士や作業療法士の採用募集を始めた。要介護状態手前のフレイル(虚弱)予防にも効果を見込み、地域の講座などに施設を開放する方針だ。 推奨メニューは90分1万8000円。医療保険外の「自費リハビリ」に当たり、費用負担は小さくない。大手保険会社3社がHALを利用できる介護保険や自動車保険を開発し、サポートする。 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、腰タイプのHALを在宅訓練用に貸し出している。連絡先はセンター022(218)6115。[仙台ロボケアセンター]医療用ロボットを手掛けるサイバーダイン(茨城県つくば市)のフランチャイズ店として医薬品卸バイタルネット(仙台市)が泉区八乙女3丁目の自社ビル1階で運営。ロボケアセンターは全国に14カ所。HALは体に貼った電極パッチで脳から筋肉に送る微弱な生体電位信号を検知し、モーターを作動させる。自力では動かせない手足を運動させることで機能改善を促す。市内にHALを導入する医療施設はあるが、公的保険に適用する疾患は限られている。

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