PCR検査技師の闘い 感染の恐怖やミスが許されない役割… 第2波備え実技研修会


青いガウン、2枚重ねの手袋、マスクを装着し、液体を吸い取った注射器を慎重に押す。「全量を出さないように」。検体からウイルス遺伝子を取り出しやすくする実習の一コマ。最後まで押して泡が出ないように集中する。実際の現場では、泡がはじけるわずかな飛沫(ひまつ)で、自身が感染する恐れがあるためだ。新型コロナウイルスの影響で、一気に注目を浴びるPCR検査。あまり知られていないながら重要な役割を担っているのが、臨床検査技師たちだ。第2波に備え、京都府臨床検査技師会などが会員らを対象とした実技研修会を開いた。6月末、会場は京都府保健環境研究所(京都市伏見区)で、府内の病院や検査機関の技師ら9人が参加。今月中旬までに約30人が受けた。これから新型コロナに対するPCR検査を導入する医療機関のほか、第1波から検査を実施する機関からの参加者もいた。
 同研究所では6月末までに約2500件の検査を処理してきた。検体からウイルス遺伝子を抽出、調製した反応試薬と遺伝子を混合しPCR装置にセットする実習の流れを、同研究所職員が説明した。いずれも繊細な工程が続く中、重要なポイントは二つ。「自身が感染しない」「結果を狂わせない」。反応試薬が入った小さなプレートに検体遺伝子を入れる工程では、96個のくぼみに注入する作業があり、コンタミネーション(混入)の危険性が高いという。同研究所では、目的の注入場所以外のくぼみをアルミ箔で覆う工夫で予防する。「検査結果が狂うとその人の人生が変わってしまうこともあります」と言葉が飛ぶ。プレートの上を移動しないピペットの動かし方を確認した。PCR検査を導入している京都府立医大病院臨床検査部の山田幸司さんは(48)「機器や試薬の違いはあったが、検査の流れは同じだった。今後は一般の手術前にも実施するなど、PCR検査が通常医療の一部になるだろう」。京都府は本年度末までに1日最大670件の検査体制の確保を目指す。PCR検査を最前線で担う臨床検査技師をはじめとするスタッフが、新型コロナウイルス禍の地域医療を下支えしていく。

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