病児・病後児保育の利用激減 委託の新潟市、緊急的補助


新潟市の委託事業で、病気にかかった子どもを預かる病児・病後児保育が、新型コロナウイルスの影響で利用者が激減して収入が大幅に落ち込み、厳しい運営状況に陥っている。市は緊急的に1事業者あたり200万円の補助金を出すが、事業の継続と採算性を考え、国が定める委託料の算出方法を改善する必要性にも言及し始めている。 新潟市は2000年、国の少子化対策「新エンゼルプラン」に病児保育の拡充が盛り込まれたことなどから委託を開始。中央区を皮切りに、現在は市内全8区に病児・病後児保育施設が計12カ所ある。通常の保育施設には預けられない病児を保育でき、市保育課は「働く親の駆け込み寺」と事業の重要性を強調する。 ただ、社会インフラの一つに位置づけて市が事業委託するのとは裏腹に、委託された医療機関や認定こども園などが運営する各施設の経営状況は厳しい。同課によると、今年開所した3施設を除いた9施設では、半数以上で赤字が常態化しているという。 そんな中、新型ウイルスの影響が直撃した。病児保育を運営する済生会新潟病院(同市西区)では、3月の利用者数が前年比約6割、4月は同5割、5月は同2割、6月は同4割。新型ウイルスの感染対策や休校によって病気にかかる子どもが減ったほか、同病院総務課は「在宅勤務が広がり、仕事をしながらでも病気の子をみることができたのではないか」と推察する。 利用者の減少は、他の施設でも同様だ。市内全体の月別利用者数は、今年3月が289人(前年682人)、4月が250人(同1050人)、5月が164人(同981人)、6月は394人(同1274人)だった。新潟市民病院を除く11施設の運営事業者は6月中旬、市に緊急支援を要望。病児が減った可能性は喜ばしいとした一方、「運営側としては大変危機的な状況だ」と窮状を訴えた。 社会に必要とされ、市が委託した事業でありながら、利用者の減少が事業継続の可否に直結するのは、国が定めた委託料の算出に理由がある。「基本分」と、利用者数に応じた「加算分」で構成され、利用者数によって委託料が大きく変動するからだ=図参照=。 市は同時に4人以上預かれる規模を求めており、運営には最低でも保育士2人と看護師1人の人件費が必要。ただ、国と県、市が3分の1ずつ負担する元々の基本分は約250万円。基本分の上乗せなど市独自の補正は講じているが、利用者数が激減すれば赤字は免れないという。市保育課は「元々の基本分では人件費もまかなえない。ウイルス禍で鮮明になったが、備える事業なのに利用者数に応じて委託料を加算する仕組みに無理がある」とする。 厚生労働省は昨年度、全国の運営事業者にアンケート形式で経営状況などを調査した。同省子ども家庭局保育課は「赤字の施設が多かったと把握している。具体案はまだないが、委託料をどうすべきかの問題意識はある」と話した。<病児・病後児保育> 病気や回復期の子ども(生後6カ月~小学6年)を対象に、集団保育が困難で、保護者が仕事などで保育ができない場合、保育士と看護師が医師と連携して預かる事業。新潟市内では病児施設が中央、東、西、江南、秋葉、南区に計10カ所、病後児施設が北、西蒲区に1カ所ずつある。今年3月に全8区で施設が整った。市内全体では、年間延べ約1万2千人の利用がある。

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