岩手の医療スタッフ足りない 感染者ゼロも医師充足度は全国最下位


岩手県での新型コロナウイルスの感染検査数が2日、1000件を超えた。全て陰性で、全国で唯一の感染者未確認が続く。県はこれまで医療や検査の体制拡充を図り、感染発生に備えてきた。一方で、慢性的な医療スタッフ不足という大きな壁が立ちはだかる。 2日現在、PCR検査の実施件数は985件、抗原検査は20件。どちらも全て陰性だった。県立中央病院(盛岡市)が6月に職員1000人の感染歴を調べた抗体検査でも、陽性は確認されなかった。 県は6月29日、県内唯一の検査機関である県環境保健研究センター(盛岡市)のPCR検査の上限を40件から2倍の80件に拡大。民間検査機関も積極的に活用している。 医療体制に関しては、感染状況の段階に応じた医療機関の役割分担を決めた。感染者が出た場合に即時受け入れ可能な病床は、県内で計約140床確保した。 体制の整備は進んでいるが、医療スタッフの不足が大きな課題となっている。 6月上旬に県庁であった新型コロナに関する医療体制を検討する委員会。出席者によると、政府が新たに設置を求め、感染拡大期に患者を優先的に受け入れる「重点医療機関」の調整で議論が紛糾した。 「施設があっても具体的に運用する医師の確保や、コストの穴埋めができなければ机上の空論だ」といった指摘が相次いだ。委員を務める病院関係者は「誰がどう動くのか具体的な想定が示されない。極めて曖昧で不安だ」と話す。 計画では、局地的に感染者が増えた場合は他の医療圏から医療スタッフを派遣。逼迫(ひっぱく)する医療圏が出た場合は、患者を他の圏域に搬送する。県の吉田陽悦新型コロナウイルス感染症対策監は「感染者の発生例は多岐にわたり、想定を示すのは難しい」と説明する。 厚生労働省が昨年まとめた医師の充足度合いを示す医師偏在指標で、岩手県は新潟県と同率の全国最下位。県内での偏在も著しく医師2458人中、半数超が盛岡周辺で勤務する。 県全体に感染が広がれば、医師をはじめ医療スタッフが足りなくなる懸念がある。工藤啓一郎医療政策室長は「県外から応援を呼べる状況ではない。事務的な仕事を民間に委託するなどして、県内の人材を効率的に動かすしかない」と厳しい表情を浮かべる。

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