コロナ感染の子ども笑顔に 加古川中央市民病院が奮闘


アンパンマンのフェースシールドを着けた医師が診察し、タブレット端末を使って遠隔で両親とつなぐ-。新型コロナウイルスに感染した子どもたちを受け入れた加古川中央市民病院(兵庫県加古川市加古川町本町)は、保護者と離れて病室で過ごさなければならない不安を和らげるため、多くの工夫を凝らした。徹底した隔離下での療養は、大人でも強い孤独感にさいなまれるとされる。看護師らが日々の業務に追われながらもアイデアを出し合い、退院時には笑顔で「もっと病院にいたい」と言いだす子もいたという。(斉藤正志)兵庫県によると、県内で10歳未満の新型コロナ感染者はこれまで13人。同病院こどもセンターは4~5月、母子で入院したケースも含め、乳児から小学生まで軽症の6人を受け入れた。病室となった陰圧室内の壁には、アンパンマンのキャラクターなどを色画用紙で張って準備。入院期間は1週間余りから最長3週間程度に及んだ。子どもは白衣だけでも怖がることがあり、医療用ガウンに立体的なN95マスクを着ければ、より恐怖を感じさせてしまう-。看護師らはこう考え、人気キャラクターなどのフェースシールドを考案。きかんしゃトーマスや恐竜、金太郎を含む4種類を、以前からセンターに配置されている保育士が色画用紙で手作りした。小学生の患者に「何これー」と笑われることもあったが、好評だったという。病室で使った物は廃棄しなければならないため、おもちゃを貸し出せず、乳児用に紙コップやストローで手作りしたこともあった。保護者がそばにいないことで、生活リズムが乱れる懸念もあった。医師や看護師の入室回数を抑える必要があったため、タブレット端末で病室内とつなぎ、一日のスケジュールを管理。毎朝、看護師が遠隔で一緒にラジオ体操をしたり、「もう歯磨きした?」「早く電気消して寝ましょうね」と話し掛けたりと、何度も会話の機会をつくった。検温など数少ない入室時に宿題も教えた。保護者は病院に来ることさえできなかったため、タブレット端末で子どもと会話してもらった時は「安心しました」と喜ばれた。退院時には「たいいんおめでとう!」と書いたアンパンマンのメダルを贈呈。裏面に、スタッフみんながお祝いの言葉を寄せた。看護師長の大庭由希子さん(48)は「これほど患者が隔離された中での看護は経験がなかった。成人でも孤独なのに、子どもはもっと不安になる。安心して過ごしてもらうため、何ができるのかを模索しながらの対応だった」と振り返る。「第2波」が到来した際は、タブレットを使い、遠隔で絵本の読み聞かせをすることも考えているという。

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