子宮頸がんウイルス検査、自己採取で


福井大学医学部産科婦人科の研究チームは本年度、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)を検出するHPV検査について、被験者本人が検体を採取する「自己採取HPV検査」の臨床試験を行う。福井県内4市町で、最大約3800人の女性が対象。黒川哲司准教授らは「この臨床試験を通じて、子宮頸がん検診への関心を高め、受診を促していきたい」と話している。研究チームによると、世界的に広く普及しているキットを使って、一般住民向けに自己採取HPV検査を行い、臨床研究として解析するのは国内で初めて。福井大医学部附属病院で昨年、県内100人を対象に行った研究では、医師が検体を採取した検査と自己採取検査を比較し、精度がほぼ変わらない結果が出た。院内の倫理委員会の承認を経て、臨床試験を進めることにした。研究チームの協力要請に応じた大野市、勝山市、越前市、高浜町で実施する。人数の規模や効果的な層を考慮して最近5年間、子宮頸がん検診を受けていない30代女性を対象に、各市町から案内通知が送付される。希望者には検査キットと同意書を送付。本人が採取した検体を郵送してもらい、PCR(遺伝子)検査で陽性か陰性かを調べる。被験者の費用負担はなく、自宅で3分ほどで検体(膣内のおりもの)を採取できる。陽性・陰性にかかわらず結果は本人に伝え、子宮頸がん検診を受けるよう推奨する。県によると、子宮頸がん検診は20歳以上の女性が原則、隔年で受けられる。ただし、2018年度の時点で、県内受診率は42・4%にとどまっている。今回の臨床試験は、検診を受ける動機付けを目指すため、新型コロナウイルス感染拡大で休止していた検診の再開に合わせ、スタートする予定。黒川准教授は「受診率が少しでもアップし、子宮頸がんの早期発見・治療につながれば」と話し、知野陽子助教と品川明子助教は「内診台に上がる恐怖心や恥ずかしい気持ちが、子宮頸がん検診に行く足を止めていると思う。自分で検査できるHPV検査キットを使ってみることで自分の体の健康を見つめ直してもらいたい」と呼び掛けている。【子宮頸がん】子宮の下部で膣(ちつ)とつながっている部分に当たる子宮頸部にできるがん。比較的若い世代でも多く発症する。性交渉などでヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが主な原因だが、感染しても必ず発症するわけではない。

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