悩む医療現場、弁護士ら助言 コロナ訴訟リスクなど


新型コロナウイルスと向き合う医療現場を支えようと、法務や労務の悩みに応じる相談窓口が広がってきた。診療を巡る訴訟リスクや職場で必要な感染対策などを巡り、弁護士や医療従事者でつくる労働組合が助言している。似通った相談も多く、専門家は「共有して生かすべきだ」と話す。「感染者の濃厚接触者の来院を拒んだ場合、訴えられるでしょうか」医療問題が専門の福原正和弁護士は5月上旬、ビデオ会議サービス「Zoom」を使った無料の相談窓口を開いた。事前にメールで相談を寄せるなどした全国の約30人の医師が参加し、福原弁護士は都内の事務所からパソコンを使って答えた。この質問には「患者との診療契約の状況や他の医療機関で治療できるかどうか、拒否する理由や目的によって総合的に判断されます」などと回答。別の医師からの「防護服で訪問診療して患者に風評被害が出た場合の法的責任は」との問いには、「診療のため必要な行為で責任が発生するとは考えにくい」と応じた。福原弁護士は「医療現場で医師が悩んでいたら、診療にも影響が出かねない」と考え、取り組みを始めたという。これまでに4回開催し、計100人近くの医師が参加した。京都市の医師(33)は「小さな診療所は顧問弁護士もおらず、法的なリスクに気をもんでいる。悩みが解消され診療に集中できそう」と語った。医療従事者の間では労働環境に悩む声も多い。医師でつくる全国医師ユニオン(東京・千代田)の4~5月のアンケート調査によると、89%が「自身の感染リスクに不安がある」と回答。患者への検査などに際して職場に求めたい対策(複数回答)では、「感染防護具の十分な供給」(93%)が最も多く、「院内のゾーニングなど感染防護体制の強化」(66%)、「危険手当の支給」(61%)と続いた。同ユニオンはホームページで感染リスクなどを巡る相談を受け付けている。感染した場合は労災の取り扱いを巡り病院側と協議することも想定され、必要に応じて労働問題を専門とする弁護士を紹介する。ユニオンの担当者は「医療従事者は毎日、感染リスクの高い場所で長時間働いている。労働上の問題点を明らかにしていきたい」と話す。看護師らが加盟する愛知県医療介護福祉労働組合連合会(愛知県医労連、名古屋市)は5月9日に新型コロナに関する電話相談窓口を開設。これまでに「自宅待機となったが休業補償が出ない」「マスクが足りていない」といった看護師らからの相談が約60件あった。寄せられた相談内容を集約し、近く県に要請書を提出する予定だ。県医労連の担当者は「医師や看護師が新型コロナを機に離職してしまう事態を何としても避けたい。一人で悩まず、声を聴かせてほしい」と話す。医学博士でもある石黒麻利子弁護士は「新型コロナへの対応は長期化する可能性が高い。医療現場での効果的な対応を広く示すためにも、現場の苦労や要望をデータベース化して分析し、共有する仕組みを構築すべきだ」と指摘する。

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