入院小児、9割で面会制限 親と分離で負担大きく


新型コロナウイルスの感染予防で、入院中の小児患者と家族の面会が難しくなっている。日本経済新聞が全国84の小児医療の主要病院に調査したところ、9割超が面会の制限や中止をしていた。難病などと闘う小児にとって、親らとの分離は精神的な影響が大きい。付き添いの交代が禁止され、特定の保護者に負担が集中する課題もある。感染対策との間で医療現場は対応に苦慮している。調査は5月中下旬に、小児がん拠点病院やこども病院など全国127施設を対象に実施、84施設(回答率66.1%)が答えた。その結果、新型コロナ対策として、小児病棟の入院患者と保護者らの面会を中止したのは17施設(20.2%)あり、制限を強化したのは62施設(73.8%)に上った。制限内容では面会人数を1人に限ったり、時間を10分~1時間にとどめたりする施設が多かったほか、「週1回」「荷物の受け渡しのみ」などと限定するケースもあった。患者が乳幼児の場合、保護者が病院に付き添い宿泊することもあるが、37施設(44.0%)が付き添い宿泊を制限・中止していた。代替策として14施設(16.7%)が「オンライン面会」に取り組み、13施設(15.5%)が導入を検討していた。病院側が無線LANを提供したり、カメラを預かって日々の子どもの写真を代わりに撮影したりする工夫もみられた。親やきょうだいなどと会える時間が減り、遊びや学びの場も少なくなったことは、子どもの心身にも影響が出ている。自由回答では「年少者で赤ちゃん返り、暴力的行為があった」「食欲が落ちるなどの症状が表れた」との記載もあったほか、「院内学級が中止になり、生活リズムが乱れた。ゲーム時間が増えた」との指摘もあった。ただ、小児病棟には小児がんなどで免疫力が低下している患者も多く、医療現場は「絶対にウイルスを持ち込めない」と警戒する。回答からは「子どもたちの楽しみを奪うことになり心が苦しい」「感染予防の優先度が難しい」と悩む姿が浮かんだ。看病する保護者の負担も高まっている。外部から病棟に出入りする人を減らすため、付き添いの交代を制限する事例も多いが、配偶者や祖父母らの支援を得られなくなり、母親など特定の保護者に負担が集中するケースが目立つ。病室から外に出ることも制限されるなどし、食事や着替え、休息もままならない場合があり、「付き添う親が疲弊している」との回答もあった。長期入院する子どもや家族の支援に取り組むNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」(東京)の光原ゆき理事長は「院内感染対策が必要なのは当然理解はできるが、子どもや保護者への影響や負担も大きい。可能な範囲で柔軟な対応や、代替策などを工夫し、患者らに寄り添ってほしい」と話している。

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