避難所「3密」対策急げ 九州自治体、発熱者専用も


梅雨の出水期を迎え、九州各地の自治体が避難所の「3密」(密閉、密集、密接)対策を急いでいる。新型コロナウイルスの集団感染を防ぐため、感染の疑いがある避難者を隔離するスペースを増設したり、新型コロナ対策を盛り込んだ防災訓練を行ったりしている。被災者が安全して過ごせる環境づくりに工夫を凝らす。5月下旬、福岡市の指定避難所となっている第一薬科大は、新型コロナの感染拡大時を想定した避難所の開設訓練を実施した。防護服とゴーグル姿の教員が体育館の入り口で避難者の体温を測り、せきや発熱などの症状があれば学内の別の建物に設置した「一時療養所」に誘導する。一時療養所には一人ひとりが距離をとれるよう間仕切りを設置。感染の疑いがある人や濃厚接触者を他の避難者から隔離して、保健所や医療機関の対応が決まるまで待機してもらう。同大学で運営本部委員長を務める小松生明教授(薬理学)は「クラスター(感染者集団)の発生をどう防ぐのかを訓練で確認できた。課題も分かった」と明かす。一方、訓練の結果、感染の疑いがある人を医療機関に搬送する方法が決まっていないことや、症状のない避難者が身を寄せる体育館に間仕切りを設けようとすると、保有する資材では足りないことが判明した。大学側は福岡市と改善策の検討を進めるという。過去には避難所で感染症が広がった事例もある。2016年の熊本地震では、避難所にいた住民の間でノロウイルスなどの感染が相次いだ。熊本市は今年5月下旬、感染防止のため、通常の避難所とは別に新型コロナの感染者らを受け入れる「保健避難所」を市内5カ所に設置することを決めた。市危機管理防災総室の担当者は「感染者が『他の人に感染させてはいけない』と考えて避難自体を控えてしまう恐れがある。誰もが安心して避難できる環境を整備したい」と語る。体調に不安のある人が気軽に相談できるよう、保健師がタブレットを使い、遠隔で健康観察をする訓練も始めた。北九州市は密集を防ぐため、災害時に開設する避難所を従来の105カ所から144カ所に増やす。18年の西日本豪雨の際に避難所が混雑した地域を中心に、近くの小中学校などを避難所にあてるという。避難所での被災者1人当たりのスペースも従来の2倍の4平方メートルに広げる。鹿児島市も避難所の増設を決め、福岡市も検討を始めた。久留米大の三橋睦子教授(災害看護学)は「命を落とすリスクは新型コロナよりも災害の方が高い」とし、住民にはためらわずに避難を優先することを勧める。避難する際は各自でマスクなどを準備することも重要だ。三橋教授は「自治体側も避難所の感染対策を徹底した上で、住民に早期避難を周知してほしい」と話している。

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