自治体、第2波に備え 1カ月でPCRセンター110カ所


新型コロナウイルスの感染が再拡大する「第2波」をにらみ、各自治体が検査・診療体制の拡充に取り組み始めた。感染の有無を調べる検査の拠点「PCRセンター」は1カ月間で110カ所に増え、新型コロナ患者の専門病院の設置も計画する。新規感染を抑えつつ経済再開の道筋を描くのが狙いだが、整備の動きは緒に就いたばかりだ。東京都千代田区の区役所前にある「九段下仮設診療所」は、保健所傘下の「帰国者・接触者相談センター」を経由せず検査が受けられる自治体運営のPCRセンターだ。かかりつけ医の紹介を受けた区民が、黄色いドーム型テント内の診療室で検体の採取を受ける。1日2時間の予約制で最大20人まで対応可能だが、20日の利用者は6人程度にまで減った。担当者は「以前は医師1人で19人をこなすこともあった」と言う。日本経済新聞が調べたところ、PCRセンターは20日までに東京都29カ所、神奈川県16カ所など全国110カ所に設置されている。全国的にも早い4月中旬に開設を計画した都内の区の担当者は「当時は保健所や医療機関の業務が逼迫し医療崩壊の恐れが高まっていた。国の方針を待っていても通知すら来ず、独断で発足させた」と話す。厚生労働省の動きの遅さに見かねた地域の焦りがセンターの広がりを生んだ形だが、再び感染が拡大すれば検査の現場は一変する。医師が必要と判断しない限り検査が受けられない事情に加え、センターの対応時間が短いことへの不満も根強い。九段下仮設診療所を運営する千代田区は「今後の備えとして地元医師会などに派遣医師の増員を頼み、対応時間を増やすことも検討している」(担当者)。自治体は診療体制も充実させて感染の再拡大に備える。柱となるのが新型コロナの入院患者に限定して診療に当たる「重点医療機関」だ。大阪府・市は1日、重篤ではないが酸素投与などが必要な「中等症」を専門とする「大阪市立十三市民病院」(同市)で患者の受け入れを始めた。18の診療科、病床数263床の総合病院が衣替えした。6月初めに90床の稼働が可能になる。対象を中等症に絞った狙いは医療崩壊を防ぐことにある。府医師会の茂松茂人会長は「医療機関の役割を分担すれば、医療従事者や物資を適切に配置できる。中等症の段階で治療することで重症者のための病床も確保が可能だ」と話す。神奈川県も湘南ヘルスイノベーションパーク(同県藤沢市、鎌倉市)のグラウンドに、国内初となるプレハブの仮設病棟を建設し、20日から1棟(39床)で受け入れを始めた。東京都も19日に発表した2020年度補正予算案に医療機関の整備に向けた調査費1000万円を盛り込んだ。施設の普及には課題もある。診断の中核を担う感染症専門医の数は十分ではなく、医療従事者に対する偏見などへの懸念から名乗りを上げる病院も多くない。寺嶋毅・東京歯科大教授(呼吸器病学)は「第2波を食い止めるには発症後すぐに検査を受けられる体制作りが急務。治療にも通常より多くの人的・物的資源が不可欠になるため、受け入れ病院への支援の拡充が必要だ」と指摘している。

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