1~4月死亡数は平年並み 新型コロナ「超過死亡」抑制


国内で新型コロナウイルスが初めて確認された1月から緊急事態宣言が発令された4月までの国全体の死亡数は平年並みだった。5都県で平年を大きく上回る「超過死亡」が生じていたが、外出自粛などで全国的に感染が拡大せず、欧米のような死亡数の急増を防げたとみられる。4月までの死亡数の推計は厚生労働省研究班が欧州と米国でそれぞれ算出している2つの計算方法を用い、週単位で分析した。日本の死亡数は2012年以降の人口動態調査のデータを使った。研究班は、平年と比較し、統計的な誤差の範囲(上限値)を超えた死亡数を「超過死亡数」とした。都道府県単位で週単位の超過死亡数を足し合わせると、欧州の手法では栃木(14人)、埼玉(5人)、千葉(61人)、東京(55人)、徳島(3人)の5都県で計138人。米国の手法では千葉県で47人に上った。栃木は1月初めに超過しており、研究班の鈴木基・国立感染症研究所感染症疫学センター長は「インフルエンザの影響とみられる」としている。そのほか4都県は4月中~下旬に超過しており、鈴木センター長は「新型コロナの影響の可能性がある」と推測している。超過死亡はすべての死因を含むため、新型コロナに感染して肺炎で死亡した人だけでなく、外出自粛や入院制限など間接的な影響で亡くなった人の増減も影響する。1~4月に新型コロナに感染して死亡が確認された人は457人に上ったが、同じ期間では自殺者は前年より671人減った。2月はインフルエンザの流行も早期に終息するなど全国的に死亡数が少なかった。ただ、統計的な上限値ではなく、平年値と比べると死亡数が上回った週もある。研究班によると、欧州の手法で週単位で計算したところ、4カ月の増加分は埼玉で393人、東京で351人、千葉で333人、大阪で244人など全国で3775人に上った。米国の手法でも平年値を上回った死亡数は2715人だった。鈴木センター長は「戦争など生命の危機が迫ると自殺者は減ることがある。自殺、交通事故などのほか、新型コロナと関連性の高い肺炎など死因別の分析方法を検討し、新型コロナが死亡数に与えた影響を推定したい」という。欧米では報告された死亡数は新型コロナと確認された死亡数を大幅に上回っており、「検査で確認されていない死亡数も多い」とされる。日本では感染が確認された死亡数と超過死亡数の差は海外ほど大きくなく、感染に気づかないなど検査を受けずに死亡した新型コロナ患者は少なかったとみられる。(社会保障エディター 前村聡)

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