接触確認COCOA、ダウンロード順調 若年層への浸透に課題も


厚生労働省は6月19日、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性がある場合に通知するスマートフォン向けアプリ「COCOA」を公開した。その後、アプリ配信の「Appストア」と「グーグルプレイ」の両ストアランキング(無料)で連日首位を獲得し、トップアプリの仲間入りを果たしている。5月に緊急事態宣言の解除表明という注目の場で安倍晋三首相が発表したこともあり、COCOAは数多くの国民が事前に存在を認知することになった。厚生労働省の発表によると公開から1日で約179万ダウンロード(iOS。アンドロイド合算)を記録。7月10日午後5時時点で約648万ダウンロードと着実に増加している。この間、グーグルプレイでは2位に陥落したのは7月2、3日のみ。しかも、両日の首位は総務省が手がけるマイナポイントの予約・申し込みアプリ「マイナポイント」だった。このところ政府系アプリが強さを見せているのだ。COCOAではダウンロード数が伸びる一方で、課題も見えてきた。フラー(千葉県柏市)が手がけるアプリ分析ツール「AppApe(アップ・エイプ)」でCOCOA所持者の6月の年代別割合を見ると、50代が25.1%と最多。以下、40代23.3%、60代以上18.6%、30代18.3%、20代11.5%、10代3.3%となっている。これをコミュニケーションアプリLINEと比較してみよう。LINEは国内で最も利用者数が多く、ほぼ全ての世代に浸透しているが、COCOAの所持者は50代以上がLINEと比べて高く、30代以下が低い。つまり若年層への浸透が遅れているのだ。東京都が10日に確認したコロナの新規感染者243人のうち、8割近くが20~30代だった。若年層の所持率の低さは、コロナへの危機意識が高齢者に比べて低いという見方もできる。感染が拡大している若年層にターゲットを絞ったマーケティング施策が必要であることがデータからは浮かび上がる。COCOAは所持者が増えれば増えるほど、接触確認の精度が上がるため、ユーザーをどこまで伸ばせるのか注目だ。COCOAのような政府系のアプリがこれだけの長期にわたりトップ圏内を維持しているのは、おそらく日本のアプリストア史上初めてだ。スマホが社会インフラになったことを象徴しているとともに、アプリのマーケティングについての示唆もある。公式指標としての有用性だ。企業がビジネスとしてアプリを運営する場合、ほとんどの数値は「企業秘密」として非公表であることが多い。一方、政府が公式情報として公表するCOCOAのダウンロード数の日別推移は「作ってからがスタート」のプロダクトであるスマホアプリを、成長軌道に乗せるためのベンチマークとして価値が高いとみている。COCOAのスマホアプリとして改善、成長していく過程は、企業がアプリのマーケティング施策を打ち出す際の格好のトレース材料になる。COCOAを取り巻く一連の動きはまさにアプリマーケティングの「生きた教材」だ。[日経MJ2020年7月15日付]

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