コロナ禍で注目の「かかりつけ医」初めて法律に定義を明記へ 地域社会で果たすべき役割とは


新型コロナ禍で受診できる医療機関を見つけられない患者が続出し、重要性が再認識された「かかりつけ医」。位置づけが曖昧なことから、厚生労働省は定義を初めて法律に明記する案をまとめ、来年の通常国会に医療法改正案を提出する方針だ。医療機関がかかりつけ関係を説明する書面を交付する制度も盛り込まれるが、対象が慢性疾患のある高齢者らに限られるなど課題もある。(井上峻輔)【関連記事】厚労省が今月23日の社会保障審議会で了承を得た案では、かかりつけ医の機能を「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う」と法律上で定義。患者が選ぶ参考に「休日・夜間の対応」「在宅医療の提供」など医療機関の情報をネット公開するシステムも整備する。患者が希望すれば、医療機関が提供する医療内容を説明する書面を交付する仕組みも導入する。対象は慢性疾患のある高齢者など継続的な受診が必要な人に限定され、一般の健康の人は対象外となっている。かかりつけ医の機能を備えた医療機関の認定制や、患者側が事前に決める登録制の導入も取りざたされたが、採用しなかった。効率化で医療財政の改善を目指す財務省の財政制度等審議会などが提言したが、日本医師会は「患者の医療へのアクセス権や医師を選ぶ権利を阻害する」と反対している。政府はこれまでもかかりつけ医の重要性を訴えてきたが、コロナ禍を踏まえ、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」に「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と明記していた。かかりつけ医の育成に取り組む日本プライマリ・ケア連合学会の副理事長で、多摩ファミリークリニック(川崎市)の大橋博樹院長にかかりつけ医の意義やあるべき姿を聞いた。(聞き手・井上峻輔)「困った時に何でも相談でき、責任を持って継続して対応するのが、かかりつけ医だ。患者の年代は問わず、どんな症状でもまずは診断し、専門の先生につなぐことも重要になる」「私のクリニックでは3世代の家族を100世帯、4世代では15世帯ほど診ている。90歳の人の訪問診療で生後9カ月のひ孫の予防接種の相談をすることや、子どもの付き添いで外来に来たお母さんに乳がん検診を勧めて見つかることもある」「患者は持病ごとに複数の医師にかかり、医師も専門分野を持つ人が多い。その結果、医師が『かかりつけ医は自分ではない』と思ってしまうことがあったのだろう。何かあった時に相談する医師を明確化しておくことは大事だ」「そこは間違っていると思う。かかりつけ医は予防や検診、相談など病気でない時の関係も重要で、もう少し広く考えた方がいい。『何かあった時はきちんと診る』という関係の『証し』があれば患者の安心にもつながる」「狭い専門領域の訓練を受けた医師が、いきなりかかりつけ医として機能するのは難しい。総合診療ができる医師もようやく増えてきて、今は過渡期だ。当面は、複数の医療機関が協力してかかりつけ医の機能を果たす方法と、総合診療医が幅広く対応する方法が混在していくのではないか」

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