業界団体のコロナガイドライン…がん患者は大丈夫?


新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されたのが5月25日。少しずつ職場や商店街、公共交通機関に人が戻ってきました。とはいえ、ワクチン開発や治療方法が開発されるまでには相当な時間がかかることが予想されており、感染リスクを前提とした新しい生活スタイルや経済活動が求められています。5月14日付で日本経済団体連合会(以下、経団連)から新しい社会づくりに向けたガイドラインが公表されました。その内容を紹介します。経団連が公表した「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」は、緊急事態宣言が解除される10日ほど前の5月14日に公表されました。このガイドラインは、国から出された「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」や新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の分析や提言内容などを踏まえて作成されたそうで、企業が行うべき感染防止の基本的な取り組みが書かれています。是非一度は目を通してみてください。ガイドラインは、テレワークの実施が容易なオフィス向けのものと、テレワークの実施が難しい製造事業場向けの2種があります。両方ともに、万が一の連絡体制づくりや対応の方法、働き方や働く場所への配慮事項などが具体的に記載されています。私の会社でも、このオフィス向けのガイドラインを参考にしつつ、個人の家庭環境や通勤などの状況を確認し、取り組むべき対策について申し送りをしています。・経団連「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」についてhttps://www.keidanren.or.jp/policy/2020/040.html●時差出勤・テレワークテレワークや混んでいる時間帯を避けた時差出勤、出社する曜日や時間帯を分けたローテーション勤務、週休3日制などの働き方が提案されており、通勤頻度を減らして感染機会を減らすこと、公共交通機関の混雑緩和を目指しています。●勤務環境(職場)職場の中での人と人との間隔の確保やマスクの着用、定期的な手洗いや手指の消毒、室内換気などについて、頻度や方法などが詳細に示されています。オンライン会議の利用や出張の検討など、社会活動を行う上で個人と企業が配慮すべき事柄が書かれています。特に、訪問場所や面会相手などについて記録をとることなど新型コロナウィルスの感染を想定した対策は、対面型の会議へ参加する際や自分たちが主催した場合にも、参考になる視点だと思いました。いずれも基本は「3つの密を防ぐこと」。これまでの知見が生かされた基本的な内容になっており、新型コロナウィルス感染リスクの低減を目指した経済活動とはこういうものなのだと納得できる内容になっています。私の会社でも、3カ月ぶりにスタッフ会議を開きました。事務所内では机と机が隣り合い、人との間隔が確保できないため、会議室を別の場所に借り、座る位置や換気、アルコール消毒やマスクの着用などを心掛けました。また、今後も事務所へ出勤する社員数は限定し、テレワークを基本としました。同じく5月14日に、81の業界団体がまとめたガイドラインも公表されています。これも、国の要請に応じて策定されたもので、詳しくは内閣官房のホームページに一覧が紹介されています。・業種別ガイドライン一覧へのリンクはこちらからhttps://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline_20200523.pdfそもそも81業種という数の多さにも驚いたのですが、その内容をみていくと、映画館や劇場、スポーツ施設や博物館、学習塾やホテルなど、それぞれの施設ごとに取り組みが異なることが分かります。いずれも私たちが生活をおくるために欠かせない施設ばかりです。私たちも一緒になって感染拡大の予防に参加していくことが大切です。私が入っているフィットネスクラブでは、ガイドラインの公表後、入館前に手指の消毒と検温をすること。また、当たり前のことではありますが、風邪などの症状のある人は、施設の利用を避けることなどが、利用者全員に確認されるようになりました。また、ロッカーやフィットネス器具、ストレッチエリアなども、使用禁止のエリアが設けられるなど、様々な感染予防に向けた対策が厳重に講じられるようになりました。このように、業界によって感染リスクの高さには相当な差がありますし、同じ会社でも、勤務環境によっては感染リスクが高い場合もあることが、この業界別のガイドラインからは想像できます。自分の業務や生活に関連しそうな業界のガイドラインには、ぜひ目を通しておくことも必要だと思いました。これからは、感染することを前提にした新しい生活様式が求められていくのでしょう。フィットネスクラブのガイドラインを読んでいたら、こんな注意書きを見つけました。「糖尿病、心臓疾患、呼吸器疾患等の基礎疾患がある方、人工透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方については、新型コロナウイルスに感染しますと重症化の可能性がありますので、ご自身の安全のため、しばらくの間、ご来館について注意してください。」施設を利用するのか、しないのか。どのような行動を選択していくかは、患者自身で考えていかなければなりません。感染リスクに対する受け止め方は、一人ひとり異なりますので、本当に難しい判断が求められるのだなと思いました。妊娠中の社員に対しては、経団連や業界別ガイドラインよりも早い4月1日に、厚生労働省から経済団体と労働団体あてに、「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について」という要請が出されています。この中では、医学的知見が確実ではないことを前提にしつつも、妊娠中の社員の不安感にふれた上で、休みやすい環境整備やテレワーク、時差通勤の活用、集団感染の予防対策の実施などが要請されています。この要請書類の最後にも「(※)このほか、高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)を有する方は、重症化するリスクが高いと考えられていますので、休みやすい環境の整備等の取組の促進に向けて、御協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。」と追記があります。最近、患者さんから「感染が怖いので通勤を避けたい」という相談を受けることが多くなりました。テレワークができる業界であれば、おもいきって働き方を提案してみることもあり得ますが、テレワークの実施が難しい業界の場合は、とても難しい相談になります。がんについても、重症化リスクに対する十分な医学的知見が集まっていない状況ではありますが、仕事と治療の両立支援についても、感染予防への配慮の視点から、復職を前提とした支援だけではなく、就労移行なども念頭に置いた支援が今後は必要になってくるかもしれません。・経済団体宛て「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について」https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000618001.pdf

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